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憲法の岐路 衆院審査会 亀裂映す自民の草案

 与野党の考えがこうも隔たっていては議論の深まりは望めない。改憲項目を絞り込むのは到底、無理―。

 衆院憲法審査会の論戦に、そんな感想を持った人が多いのではないか。

 焦点は自民党が4年前にまとめた改憲草案だった。国防軍創設や天皇元首化を盛り込んだ内容に、かねて国民の批判も強い。自民はそのままの形では審査会に出さない意向を表明しているものの、撤回はしていない。

 審査会では民進党の枝野幸男幹事長が「草案は立憲主義に反する」と指摘。安保法についても「憲法解釈を一方的に変更した」と批判した。共産、社民の委員も、自民草案と安保法について同じような趣旨を述べている。

 自民の中谷元氏は立憲主義に反するとの批判について、「安倍政権に対する単なる好き嫌いで使っている」と反論。上川陽子氏は「抽象的な言葉のみで憲法論議が閉ざされることがあってはならない」と述べた。

 安倍内閣は2年前、集団的自衛権の行使は憲法上許されないとする歴代内閣の憲法解釈を一方的に変更して行使に道を開いた。昨年は憲法違反との批判が強い安保関連法を成立させた。

 草案、安保法への批判は事実に立脚している。好き嫌いの話ではないし、抽象的な言葉でもない。

 表現の自由を巡るやりとりも見過ごせない。自民草案が「公益および公の秩序」に反する場合は表現の自由は認められないとしていることについて、中谷氏は「当然のこと」と述べた。

 表現の自由は国民が権力を監視し、主権者として意思を示すためにも欠かせないものである。だから今の憲法は一切の前提条件なしに「表現の自由は、これを保障する」と定めている。

 表現の自由に制約を加えることを「当然」と述べる姿勢にも、憲法への無理解がのぞいている。

 自民草案は他にも、政府に超法規的な権限を与える緊急事態条項、家族の相互扶助を定める規定など、民主主義と両立しにくい内容を含んでいる。自民が草案を撤回しない限り、実のある憲法論議は難しいだろう。

 立憲主義とは何か、自民草案は近代憲法の理念にかなっているのか―。こうした問題で与野党が対立した憲法審は、改憲論議の土俵が整っていないことをあらためて浮き彫りにしている。

(11月26日)

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