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軍事情報協定 不安を残す性急な締結

 日韓両政府が、軍事情報包括保護協定(GSOMIA)を締結した。安全保障分野の機密情報共有を可能にする取り決めだ。今後に不安も残す。手放しで歓迎することはできない。

 国同士で機密性の高い軍事情報を提供し合う際、第三国への漏えいを防ぐために結ぶ。軍事技術のほか暗号情報、高度のシステム統合技術など、あらゆる情報が対象になる。日本は米国やオーストラリアなどとも締結している。

 韓国とは2012年に交渉が進んだものの、世論の反発を受けた韓国政府が締結の直前に延期を申し入れ、棚上げになった経緯がある。発効により、これまで米国を介して共有してきた北朝鮮に関する情報を日韓で直接やりとりできるようになる。

 問題は、韓国の政治が混迷を深める中で締結されたことだ。

 親友の国政介入疑惑で朴槿恵大統領の求心力は低下している。朴政権は外交実績として締結の意向を示してきた。政策の遂行が行き詰まる前に―と、慌ただしく踏み切ったのだろう。

 朴政権の退陣を要求する野党は日本との安保分野での協力に否定的だ。締結を決めた閣議には野党系のソウル市長が出席し、政権は既に正統性を失ったとして協定に反対した。こんな状態で円滑に運用できるのか、疑問がある。

 韓国の世論も注視していく必要がある。植民地支配の歴史的経緯から自衛隊との協力には拒否感が根強い。朴氏退陣を求める大規模集会で協定も批判されている。矛先が日本に向くかもしれない。対日感情が悪化する展開は避けなくてはならない。

 情報共有とともに日米韓の軍事協力は加速する可能性がある。3カ国は先月、北朝鮮への圧力強化の方針を確認している。9月には北朝鮮をけん制するため、米軍の戦略爆撃機と日韓の戦闘機がそれぞれ訓練を行った。こうした場面が増えるのではないか。

 協定について北朝鮮は「朝鮮半島で核戦争の危険を一層増大させる」と非難していた。中国も「冷戦思考にこだわり、軍事情報協力を強化することは平和的発展の時代の潮流に合わない」と批判している。北東アジアの緊張が高まるようでは本末転倒である。

 今回、協定の署名式は韓国国防省で非公開で行われた。日本政府は締結前日の閣議決定も公表しなかった。現時点で締結を急ぐ必要があったのか、今後の協力の在り方をどう考えているのか。政府は国民に詳しく説明すべきだ。

(11月26日)

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