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英国のEU離脱、米国の次期大統領選出と、よそ事ながら不安な選択が続く中で、こちらの選択は拍手したくなる。日本とロシアからの原発輸入を白紙にしたベトナムである。南シナ海に面した風光明媚(めいび)な地で初めての計画だった

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反対運動の許されない体制下では、住民に危険性が知らされることもない。順調に進むかに見えた。ところが安全対策で費用が倍近くになると分かり、財政が苦しくなった。熱心な前首相が引退し、堅実派が実権を握ったことも大きい

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国民意識の変化も影響した。台湾企業が建設する製鉄所で公害が起き、環境への目が厳しくなっていた。そもそもは民主党政権が福島の事故に目をつぶり、トップセールスで売り込んだ原発だ。ロシアの「潜水艦付き」に対抗し、手厚い援助を申し出た

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当時の経産省の厚かましさも記憶に残る。現地調査の費用は、大震災の復興予算から流用されていた。予定地一帯は塩田が多く、陽光に恵まれた地だ。今後の技術協力は自然エネルギーの活用こそがふさわしい

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厚かましさは福島の事故処理費用も同じだ。経産省が当初の倍の20兆円超に上ると試算した。はなから無理と分かっていて「東電が負担する」と繰り返し、お手上げとなって国民負担を求める魂胆が見え透いている。収拾の見通しがないのに、これで済むのか。責任をうやむやにしたままでは受け入れがたい。

(11月29日)

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