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脳の血流を調べると、覚醒剤の依存者は血液が隅々まで行き渡っていない。有害物質が神経細胞を消滅させ血液を必要としなくなるからだ。思考や感情を成り立たせている神経細胞のネットワークが壊される

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すると幻覚や妄想が現れる。量を増やさないと快感が得られない。逆に不快な症状は、少量でも出るようになる。使用をやめて何年たっても、幻覚や妄想は消えない―。県精神保健福祉センターの治療回復プログラムのテキストが指摘する覚醒剤の怖さだ

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再び手を出すのは忘れられぬ快感ゆえか、幻覚や妄想の苦しさからか。ASKA容疑者が自ら「盗撮されている」と110番した末に逮捕された。2年前、有罪判決を受けて再起を誓ったはずだ。華やかな光を浴び続けてきたゆえに、世間から遠ざかる孤独に耐えられなかったのか

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ロングヒットしている自作の曲「太陽と埃(ほこり)の中で」は青春の見果てぬ夢を歌っているのだろう。〓(歌記号)追いかけて追いかけても/つかめないものばかりさ/愛して愛しても近づくほど見えない…。聴き直せば切なさが込み上げてくる。そんなファンは多いと思う

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覚醒剤は年齢が上がると再犯率が高くなり、50代以上は8割を超える。先のテキストによれば、依存者の最も悲しい障害は自分らしさを失うことだ。58歳のASKAが自分を取り戻して再び夢を追える日が来るのか。いばらの道である。

(11月30日)

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