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天皇退位問題 幅広い議論で合意を

 天皇陛下の退位を巡って2019(平成31)年の元日に皇太子さまが即位し、新元号に切り替える案を政府が検討していることが明らかになった。

 生前の退位が認められれば、昭和天皇が亡くなってから陛下が即位した時と違い、あらかじめ元号を改める日が決めておける。代替わりの儀式の負担軽減になる。

 新元号の始まりを元日にすることは利点が多い。カレンダーなどの印刷物や公文書の準備が容易になる。何より国民に分かりやすく、混乱が最小限に抑えられる。

 陛下も昨年8月のビデオメッセージで「平成30年」を区切りとしたと取れる発言をされている。

 これらを総合すると、19年元日の即位、改元は有力な案となり得るのは確かだろう。

 問題は、その前提として政府が陛下一代に限って退位を認める特別法を制定する方針でいることだ。20日召集の通常国会に法案を提出し、6月までの会期内に成立させる日程まで描いている。

 政府の有識者会議も今月23日の論点整理公表を前に、政府方針に沿った方向性を早々固めている。

 陛下は先月、83歳になられた。年齢を考えると、法整備を急がなければならないのは分かる。だからといって、最も大切な憲法上の問題について議論をおろそかにすることはできない。

 憲法は皇位の継承について「皇室典範の定めるところにより」と規定している。その典範は新天皇の即位は「天皇が崩じた(亡くなった)とき」と定める。

 特別法で陛下一代の退位を認めることは憲法の趣旨に合わない。有識者会議が意見聴取した憲法学者からはそんな指摘もあった。

 民進党も特別法は「違憲の疑いを生じさせる」として、典範改正による退位を求めている。共産、社民の両党も同様だ。

 気になるのは、安倍晋三首相がしきりに「政争の具にしてはならない」と述べ、野党側をけん制していることだ。

 憲法は、象徴天皇の地位を「国民の総意に基づく」と定める。その趣旨に照らせば、国民の代表で構成する国会が「対決」の状態になるのは望ましくない。

 同時に、政府方針に異論を唱えることを「政争の具」とみなし、議論を萎縮させるようなこともまた、あってはならない。

 与野党の協議が始まるのはこれからだ。新元号の適用時期を含め、忌憚(きたん)のない意見を出し合い、党派を超えた合意を導き出す。そんな知恵が国会に求められる。

(1月12日)

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