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中東和平 交渉の土台は崩せない

 これではイスラエルとパレスチナによる中東和平交渉の再開などいよいよ望めない。

 米国の歴代政権が支持してきた方針について、トランプ大統領が転換する姿勢を示した。

 パレスチナ国家を樹立し、イスラエルとの共存を目指す「2国家共存」である。米国は従来、和平の実現に向けた唯一の道だとの立場を取ってきた。

 トランプ氏はこれにこだわらない考えを示した。パレスチナ側の反発が見込まれる。和平交渉の土台を崩すわけにはいかない。

 イスラエルのネタニヤフ首相と初会談したトランプ氏は共同記者会見で「双方が望むなら、2国家共存でも1国家でも、どちらでも構わない」とした。

 独立国家樹立が悲願であるパレスチナにすれば、受け入れられない発言だろう。首脳会談を前にパレスチナ外務省は、歴代政権の方針をトランプ氏が変えるなら「危険な政策変更だ」との声明を発表し、けん制していた。

 トランプ氏は和平に向け、イスラエルとパレスチナ自治政府が直接交渉で解決すべきだとも述べている。交渉の成功には「双方が歩み寄らなければならない」としつつ、具体策は示していない。

 米国はパレスチナ国家の樹立を目標に掲げた和平案を国連などと共にまとめ、2003年にイスラエル、パレスチナと履行開始で合意した。経緯を踏まえれば、関与を避けるかのトランプ氏の発言はあまりに無責任だ。

 火種は他にもある。トランプ氏が米大使館をテルアビブからエルサレムへ移転しようと考えていることだ。会見で「実現したい」と改めて意欲を見せ、今は注意深く状況を見ているとした。

 東エルサレムを首都とする国家樹立を目指すパレスチナは反対している。強引に実行すれば中東情勢が緊迫しかねない。

 ヨルダン川西岸などでの入植地拡大については「少し差し控えてほしい」とイスラエルに自制を求める一方、非難決議を採択した国連を批判している。閣僚承認が遅れるなどトランプ政権の足取りはおぼつかない。中東政策もまだ固まっていないのではないか。

 中東和平を巡ってフランス政府が先月開催した閣僚級の国際会議は2国家共存の原則を確認する共同宣言を発表した。14年以降、止まっている和平交渉の再開を後押しする努力が求められる。

 日本を含め各国は、米国に対し国際社会と歩調を合わせるよう強く働き掛けなくてはならない。

(2月17日)

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