長野県のニュース

斜面

「一人口は食えぬが二人口は食える」。落語でおなじみの熊さん、八つぁんが縁談を勧められたときの大家さんの決めぜりふだ。夫婦になっても米やまきの出費がそう増えるわけではない。むしろやりくりを工夫するから楽になる、という説得はうなずける

   ◆

さて暮らし向きを示すこの数字はどう見たらいいだろう。29年ぶりの高水準となった去年のエンゲル係数だ。総務省の家計調査で2人以上の世帯の支出全体に占める食費の比率が25・8%になった。上昇傾向がはっきり見て取れる

   ◆

教科書では係数が低いほど豊かとされる。関係を見つけた統計学者エルンスト・エンゲルは福沢諭吉とほぼ同時代のドイツ人だ。明治・大正と食料難の敗戦直後は低くなっても60%前後。それが戦後復興とともに20%台まで下がり続け2005年に底を打つ

   ◆

去年の上昇は円安や天候不順による食料品の値上がりが響いた。節約志向が根強く、食費以外の支出は切り詰めたことも背景という。将来不安を抱えて収入は増えない。厳しい暮らしの反映と言えるだろう

   ◆

半面で生活スタイルの変化も指摘される。車などモノに執着せず食に楽しみを見いだす“プチぜいたく”。グルメ番組も後押しする。共働きや高齢世帯では手軽な総菜の利用が増えた。一面では捉えにくくなったエンゲル係数。「二人口なら…」の大家さんの説教も通じにくいご時世だ。

(2月21日)

最近の斜面