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大作「ローマ人の物語」を書いた作家塩野七生さんが今度は「ギリシア人の物語」に取り組んでいる。先月下旬、2冊目を刊行した。「民主主義の罠(わな)」。帯に太く書かれた言葉に引かれ、手にした

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都市国家アテネは民主政を推し進め、黄金期を迎える。しかし、立役者のペリクレスが亡くなると、大衆を扇動するポピュリズムが台頭。衆愚政を招き、没落の道を突き進む―。紀元前5世紀に起きたアテネの栄枯盛衰を描いた

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英語で民主政はデモクラシー、扇動家をデマゴーグという。共に古典ギリシャ語の「デーモス(民衆)」に由来する。一読して民主政と衆愚政は表裏一体であり、大衆が不安にあおられることの危うさが分かった。塩野さんは最後、アテネ人は「自滅したのであった」と文章を結んだ

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はるか昔の話だが、今に重ね合わせる人も多いのではないか。欧州では移民に仕事を奪われていると市民をあおって右派勢力が伸長する。トランプ大統領も米国が落ちぶれたことを訴え、移民や他国、メディアに責任をなすり付ける。事実と違うことまで平気で語るありさまだ

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アテネは50年かけて築き上げた繁栄を25年で台無しにした―。塩野さんはこんな分析もしている。坂道を転げ落ちるのは早い。政治家の言葉にあおられ、大切なものを失うことにならないか。日本人も人ごとではない。歴史からくみ取る教訓は大きい。

(2月27日)

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