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経産省の施錠 「知る権利」が損なわれる

 経済産業省が庁舎内の全執務室の日中施錠を始めた。

 ドアに鍵がかかると報道機関の取材が制約され、憲法が国民に保障する「知る権利」が損なわれる。経産省は施錠を直ちにやめるべきだ。

 原則として、すべての執務室の扉が施錠された。来訪者が各課や各室を訪ねるときは内線電話で連絡して開けてもらう。

 施錠に合わせて、メディアの取材にも新しいルールが適用された。記者が各課幹部から話を聞くときは別の職員が同席、内容をメモして広報室に報告する。

 今度の措置は一般の人ではなく、記者が自由に入れないようにすることに狙いがある。

 経産省には、2006年10月の最高裁決定を思い起こしてもらいたい。NHK記者が法廷で取材源に関わる証言を拒否したことについての裁判だ。

 「報道機関の報道は、国民が国政に関与するにつき重要な判断の資料を提供し、国民の知る権利に奉仕するものだ」

 判決は以上の通り述べて証言拒否を「正当」と認めた。

 執務室の扉の施錠は、最高裁もその意義を認めるメディアの取材活動を制約する。認めるわけにはいかない。

 国の機関が持つ情報は本来国民のものである。一部の官僚が密室で扱っていいものではない。

 01年施行の情報公開法は法の目的について「公正で民主的な行政の推進に資すること」と述べている。施錠は公開法に照らしても問題がある。

 安倍晋三政権になってから、情報開示に後ろ向きの姿勢が強まっている。防衛省では南スーダンPKOの日報を当初、廃棄済みとの理由で開示しなかった。財務省は大阪府の国有地の売却交渉記録を「廃棄した」と説明している。

 報道への介入も目に余る。総務省は2年前、情報番組を巡りNHKを文書で「厳重注意」した。自民党はNHK幹部を党本部に呼んで「事情聴取」している。

 経産省の措置には政府内にも異論がある。山本公一環境相は記者会見で「あまり好ましくないと思う」。石井啓一国土交通相は「情報管理は重要だが、各執務室で課長、室長が適切に対応している」と述べている。それが普通の感覚というものだ。

 そうした“常識”がこれからも閣内で維持されるかどうか、施錠が他の省庁にも広がらないか。そこに確信が持てないところに、安倍政権の危うさがある。

(3月1日)

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