長野県のニュース

共謀罪法案 危うい本質があらわだ

 話し合うことを処罰の対象にする共謀罪は密告や盗聴による監視社会を招き寄せる危うさがある。表向きはどうあれ、その本質に変わりはないことがあらわである。

 共謀罪を新設する法案の詳細が明らかになった。実行前に自首した場合、刑を減免する規定を置き、密告を促している。

 捜査機関にとって密告は謀議をつかむ手段となる。協力者をつくり、共謀があった段階で自首させることもあり得るだろう。

 共謀罪は、内心の自由を侵し、市民活動の抑圧につながる危険性をはらむ。うかつに話したら密告されるかもしれないと疑心暗鬼になれば、なおさら自由な意見の表明と交換は妨げられる。社会を根本から変質させかねない。

 戦前、治安維持法の「協議罪」は思想や言論、結社の弾圧に多用された。雑誌編集者らが摘発された横浜事件をはじめ、多くの事件がでっち上げられている。

 話し合うだけで犯罪になることは共謀罪も同じだ。歴史に目を向けたとき、政府の方針に反対する市民団体が虚偽の密告によって弾圧されるような事態が再び起きないと言い切れるだろうか。

 もう一つ、共謀の捜査、立件に欠かせないのは盗聴だ。いずれ、電話、メールなどの通信傍受の対象になる可能性がある。金田勝年法相は、捜査に用いることを現在は考えていないとしつつ、「検討すべき課題」と述べている。

 室内に盗聴器を置く「会話傍受」の導入につながらないかも心配だ。警察はかねて捜査に有用と主張してきた。市民の活動や生活に監視の網が広がりかねない。

 共謀罪法案は国会で過去3度、廃案になった。それを踏まえ政府は今回、「テロ等準備罪」に名称を改め、一定の準備行為を要件に加えた。適用対象も「組織的犯罪集団」に限定したと説明する。

 けれども、共謀を処罰することに変わりはない。法案は準備行為について「資金または物品の手配、関係場所の下見その他」と定めるが、これでは具体的に明示したことにはならない。

 たまたま通りかかっただけで、下見とされないか。銀行預金を引き出したら、資金の準備とみなされないか。捜査機関がどうとでも判断できる余地は大きい。

 市民団体や労組などが「目的が一変した」として組織的犯罪集団とされる恐れも依然残る。政府が説明を重ねるほど危うさが浮き彫りになる。民主主義の根幹を損なう共謀罪は断念すべきである。

(3月1日)

最近の社説