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福島特産カラムシで織ったタペストリー 福島の寺に寄贈

山口さん(右)が制作し、福島市の寺院に寄贈したタペストリー「からむし曼荼羅『鎮魂』」=長野市山口さん(右)が制作し、福島市の寺院に寄贈したタペストリー「からむし曼荼羅『鎮魂』」=長野市
 長野市青木島町綱島の自宅に染織の工房を構える山口善久さん(74)が、仏教の曼荼羅(まんだら)をモチーフにした自作のタペストリー「からむし曼荼羅『鎮魂』」を、福島市の寺院、安洞(あんとう)院に寄贈した。福島県特産のイラクサ科の植物カラムシで織った作品で、東日本大震災の被災地への祈りを込めた。11日に行われる七回忌「311祈りの日」で、本堂でお披露目される。

 タペストリーは高さ1・7メートル余、幅1・4メートルで2015年に1カ月半ほどかけて制作した。ツバキの種の殻を煮出した液で染色したカラムシの糸を使い、市松模様に九つの円を組み合わせた。

 現地の被災状況を報道で見聞きし、心を痛めていたという山口さん。復興がなかなか進まず、避難者が故郷に帰ることのできない状況の中で、犠牲になった人たちの魂を慰めるため、何かできることはないか考えた。「犠牲者の供養に使ってもらえたらいい」と、作品の寄贈を決めた。

 贈るだけの価値があるか確かめたいと、15年に松本市であった第35回県工芸展に出品。信濃毎日新聞社賞を受賞した。特殊技法を併用して織り上げ、抑制を利かせたモノトーンの色彩構成が寡黙な静謐(せいひつ)感を漂わせる秀作―と評価された。

 2月12日付信濃毎日新聞朝刊で、犠牲者の鎮魂のため3月11日に安洞院で慰霊法要があると知り、タペストリーの寄進を打診。住職から快諾を得た。山口さんは「ちょうど七回忌で仏縁を感じる」と話す。

 山口さんは都内で生まれ、両親の出身地の旧戸隠村(現長野市)や長野市で育った。50歳になる1992年に脱サラし、畳糸作りをなりわいにしていた親の影響もあって手に職をつけようと染織を学び、自宅に工房「野蚕(のこ)」を構えた。福島県とは、カラムシを栽培している昭和村で96年に「からむし織」の講座を受けた縁がある。

 カラムシは糸をつないで糸車でよりを掛けてから織るため手間暇がかかるが、「張りがあり、織り上がると何とも言えないグラデーションに目を奪われる」と、素材の魅力を語る。「カラムシを通じて福島と出合い、第二の出発点としてお世話になった。恩返しをしたい」と言い、「県内にも福島から大勢避難している。今回のことが励みになったらうれしい」と話している。

(3月2日)

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