長野県のニュース

大統領の演説 軍事に頼る危うい姿勢

 排他的な言動が招いた混乱はひどくなるばかりで、政策を遂行する体制もいまだに整わない。勇ましい言葉を並べるしかなかったのではないか。

 米国のトランプ大統領が就任後初めて連邦議会で行った施政方針演説である。

 「われわれは正義のために戦うことをやめない」とし、歴史的な規模となる国防費増額を議会に求める意向を示した。

 軍事力強化という分かりやすい施策で「強い米国」への夢を国民に抱かせ、低迷する支持率の回復を狙ったのだろう。

 その姿勢は危うい。政権運営への懸念がますます募る。

 トランプ政権は既に2018会計年度(17年10月〜18年9月)予算で国防費を540億ドル(約6兆円)増額する方針を明らかにしている。前年度より10%も増やし、核戦力の強化や通常兵器の増強を図る考えとみられる。

 増額分を賄うために、安全保障分野以外のあらゆる政府機関の予算がカットされる見通しだ。外交や環境保護に関わる費用に大なたが振るわれれば、国際社会における米国の発言力や存在感は著しく低下するだろう。

 トランプ氏は今回の演説でもメキシコ国境での壁建設を含め、治安対策として厳しい不法移民対策を進める考えを示した。

 軍事力を誇示するようなことになれば、テロの標的にされるなど逆に米国の危険を高める状況を招くのではないか。議会は厳しく向き合う必要がある。

 経済政策も矛盾している。法人税減税と同時に中間層の大規模減税を実施するとした。一方、インフラ整備で巨額の財政支出を行うことも表明している。

 減税で歳入は減り、積極財政で歳出が増える。トランプ氏は経済成長が続けば問題はないとの立場だが、景気拡大が今後も続いていく保証はない。

 期待先行の“トランプ相場”が剥げ落ち、各国と通商摩擦を生むような事態になれば、経済がつまずく恐れがある。

 トランプ氏は自身の経済政策をどう実現するか、説得力ある道筋を示せなかった。予算を巡り議会ともめるのは必至だ。

 大統領就任後、メディア攻撃に明け暮れ、成果と呼べるものはほとんどない。政権運営を「極めて順調」と自賛したが、勝手な言い分である。今の大衆迎合的な政治手法を改めない限り、演説で訴えた「米国を再び偉大に」は言葉だけで終わる可能性が高い。

(3月2日)

最近の社説