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ハンセン病 被害補償の道を閉ざすな

 90年に及んだハンセン病患者の強制隔離政策によって苦しみを強いられたのは、療養所に収容された人に限らない。社会の中で、差別や偏見におびえながら生きてきた人たちがいる。さらに、患者本人だけでなく家族もまた被害者である。

 その救済と補償を図ることは、積み残された大きな課題だ。国に賠償を請求できる法律上の期限が過ぎたからといって、道を閉ざすことがあってはならない。

 病気を隠したり、収容を拒んだりして療養所に入らなかった「非入所者」3人の遺族が起こした訴訟で、和解が成立した。遺族が請求権を引き継いでいることを認め、国は一時金を支払う。

 提訴したのは昨年3月29日。隔離政策の根拠となった「らい予防法」の廃止から20年が過ぎると、民法の規定で賠償請求の期限が切れる。その2日前だった。

 これまで明確でなかった請求権の相続が認められたことは意味がある。とはいえ、請求の期限は既に過ぎ、ほかの遺族が新たに訴訟を起こせるわけではない。

 厚生労働省は、遺族の請求を排除してはいなかったと述べている。ならばなぜ、もっと早くから、和解一時金を受け取れることを周知しなかったのか。

 病気をひた隠しにしてきた非入所者は少なくない。根深い偏見は今も残り、遺族もまた、明かせずにいる現実がある。

 裁判を起こすこと自体、容易ではない。補償を得られる確証がなければなおさらである。厚労省は果たすべき責務を怠った。

 強制隔離を違憲と断じた熊本地裁判決が2001年に確定し、国は補償制度を設けたほか、裁判を通じて和解一時金を支払ってきた。けれども、支払いが決まった1万1700人余のうち、非入所者は170人にすぎない。

 声を上げられない人たちを置き去りにして補償を打ち切るわけにはいかない。裁判による救済ができなくなるなら、それに代わる手だてを講じる必要がある。

 もう一つ、目を向けなければならないのが、家族の被害だ。患者だけでなく家族も差別され、理不尽な仕打ちを受けた。国はその救済をしていない。遺族が受け取る補償金、一時金は、あくまで元患者の被害に対するものだ。

 家族たちは、やはり請求期限の直前に、国に賠償と謝罪を求める集団訴訟を起こしている。背後に、表に出られない多くの家族の存在がある。救済に道を開くことは司法、政府の責任である。

(3月3日)

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