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岡谷市出身のフォトジャーナリスト中村梧郎さんは下半身がつながったまま生まれた7歳の「ベトちゃんとドクちゃん」の分離手術に立ち会った。1988年、ベトナムの病院でのことだ。兄のベトちゃんが急性脳症になり日本で治療。その後、弟を優先して救う苦渋の処置だった

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中村さんが初めて会ったのは生後10カ月のとき。長く生きられないだろうと思った。ところが3歳で再会した兄弟は活発に動き回っていた。共有の臓器を弟に移す難手術は無事成功。ただ脳障害で寝たきりの兄は26歳で亡くなった

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中村さんの写真レポート「戦場の枯葉剤」は成長していく兄弟を追っている。愛らしい表情に枯れ葉剤の残酷さを呪わずにはいられない。世代を超えて先天性異常やがんを引き起こすとみられる猛毒ダイオキシン。米軍はベトナム戦争で10年間もまき続けた

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ベトナムを訪問中の天皇、皇后両陛下はドクさんとお会いになった。皇后さまは「お元気でいらっしゃると、みんなどれだけ喜ぶことでしょう」と声を掛けている。双子の父となった36歳の姿に命をつなぐ尊さ、素晴らしさを思う

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枯れ葉剤は米国や韓国の帰還兵もむしばんだ。国防長官としてベトナム戦争を指揮した故マクナマラ氏は「誤りだった」と述べた。その後も米国の力の信奉は変わらずトランプ政権では強まるように見える。悲劇を風化させてはなるまい。

(3月4日)

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