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原発汚染水の放射性物質除去、信大チームが新素材

 信州大工学部(長野市)物質化学科の手嶋勝弥教授(44)と林文隆助教(36)らの研究チームが、東京電力福島第1原発事故で冷却に使われた汚染水から放射性物質のストロンチウムを除去する新素材を開発したことが4日、分かった。東電が同原発敷地でメーカーと共同で試験運用する多核種除去設備(ALPS)での実用化も視野に特許を出願。除去が難しいストロンチウムを効率的に吸着し、使用後に放射性廃棄物となる吸着材の減量にもつながる可能性がある。

 東電ホールディングスによると、ALPSは、セシウムを取り除く既存の処理施設が対応できない放射性物質を除去している。ストロンチウムは残存する放射性物質で最も多い。セシウム用を改良した吸着材が実用化されているが、大量の放射性廃棄物が発生することが課題となっている。

 手嶋教授らの新素材は、複数の金属元素の結晶構造。例えば、リチウム、モリブデン、ニオブによる結晶は、中央にあったリチウム2個が外れ、ストロンチウム1個が吸着される=図。海中に多いナトリウムもストロンチウムと同じくプラスの電荷を持つイオンだが、ストロンチウムを選択的に取り込む特性があるという。

 性能実験では新素材を、同量のストロンチウムの溶液に入れて24時間置くと全量除去できた。海水とストロンチウムを混合した模擬水でもストロンチウムにほぼ限って吸着することを確認したという。

 ALPSは稼働後から16年末時点で、約71万立方メートルの汚染水を処理、使用済み吸着材の放射性廃棄物は約6千立方メートルに上る。ストロンチウムの除去が効率化できれば、処理後の放射性廃棄物も減る。

 研究グループは、高温で加熱した溶液を冷却しながら物質を結晶化させる「フラックス法」を採用。従来よりも微細な結晶にできることも特徴だ。調整の結果、当初生成した10マイクロミリの結晶の大きさを100分の1の100ナノミリにすることに成功した。結晶が微細になって表面積が増えれば、吸着速度も上がるとみられている。

 手嶋教授は「従来とは全く異なる手法でアプローチできた。さらに性能を高めていきたい」と話している。現在、別の元素との組み合わせなどを研究している。

 福島第1原発の汚染水処理向けに、ストロンチウムの吸着材の開発は全国の大学や企業が研究している。

(3月5日)

長野県のニュース(3月5日)