長野県のニュース

斜面

牧畜をするアリがいるという。本州にも生息するミツバアリだ。地面に掘った巣の中でアリノタカラという体長約1ミリの虫と共生する。この虫は植物の根から樹液を吸い、糖分などが豊富な甘露を体外に出す

   ◆

これがアリの餌になる。人間が牛を育て牛乳を飲むように、アリも「家畜」を育て世話している。新しい女王になる雌アリはアリノタカラをくわえて巣を飛び立ち、新しく作った巣で増殖させる。アリの「嫁入り道具」は、宝よりもっと大切なものという

   ◆

九州大総合研究博物館助教丸山宗利さんが著書「昆虫はすごい」に書いている。中南米にすむハキリアリは、切り取った葉を巣に持ち帰り菌を植え付ける。菌糸が餌になる。キノコ栽培に似ている。それを邪魔する余計な微生物は、抗生物質を分泌し成長を抑えるというから驚きだ

   ◆

「一寸の虫にも五分の魂」という。小さく弱いものにもそれ相応の意地があるから侮れない、という意味のことわざだ。だが農業を人間よりもはるか昔から営んできた大先輩と考えれば、失礼な言い方か。まして「虫けら」とさげすむことなど、できない

   ◆

きょうは二十四節気の「啓蟄(けいちつ)」。地中で冬ごもりしていた虫たちが地上にはい出てくるころをいう。雪も残る信州では多くの虫はまだじっとしている。行きつ戻りつしながら春は近づく。虫たちと顔を合わせる日がいつになく待ち遠しい。

(3月5日)

最近の斜面