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防災ヘリ墜落 一体何が起きたのか

 あおむけになって大破した機体が衝撃の大きさを物語る。県の消防防災ヘリコプターが墜落した事故は、乗員9人全員が死亡する惨事となった。

 搭乗していた消防隊員たちは、松本、上田など各地域の消防局や消防本部から選抜され、県消防防災航空隊に派遣されていた。30〜40代の精鋭である。

 航空隊は山岳遭難や災害の救助活動のほか、地震や大雪で孤立した地域への物資輸送などにも携わる。培った経験を生かし、地元に戻って若い消防隊員を引っ張っていくことを期待されていた。その人たちをいちどきに失ったことは、つくづく惜しまれる。

 5日午後、山岳遭難の救助訓練のため県営松本空港を飛び立った後、松本市境の鉢伏山付近の山中に墜落した。民間機を含め国内では最悪規模のヘリ事故である。

 積雪にも妨げられ、その日のうちに発見、搬送できたのは3人。翌早朝から救助活動を再開し、残る6人を機体内で見つけた。

 事故機に一体何があったのか。当日、松本近辺は穏やかな天候で、強い風も吹いていなかったという。ヘリは離陸から10〜15分で、訓練場所に近い臨時離着陸場に着く予定だった。

 ところが、無事に飛び立ったという無線連絡の後、交信が途絶えている。異変を察知した県消防防災航空センターが呼びかけても、応答がなかった。

 防災ヘリの墜落事故は、過去にも県外で起きている。救助者や収容者を釣り上げるために高度を下げ、回転翼が岩や樹木に接触したことなどが原因だった。

 今回は状況が異なるようだ。離陸後間もなく、まだ救助訓練を始める前に墜落したとみられる。

 運航前の点検でヘリに異常はなかったという。パイロットは20年前に採用され、総飛行時間が5千時間を超すベテランだった。

 エンジンや機器の不具合なら、何らかの連絡はできたはずだが、それすらない。山岳部特有の急な気流の変化に巻き込まれた可能性が指摘されている。

 機体は胴体部分がぺしゃんこにつぶれていた。乗員の全身の損傷が激しいことからも、かなりの高さから山肌に叩きつけられるように落ちたともみられる。

 小型ヘリは、航空機のようにフライトレコーダー(飛行記録装置)の設置義務がない。事故機にも搭載されていなかった。乗員が全員亡くなり、原因解明にも困難が伴うとみられるが、手だてを尽くして検証しなくてはならない。

(3月7日)

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