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寒天作り、3月も 諏訪の企業が「厳寒期のみ」の常識に挑む

初めて製造期間を3月に延ばし、「天出し」している寒天と茅野さん初めて製造期間を3月に延ばし、「天出し」している寒天と茅野さん
 寒天作りは厳寒に限る―。江戸時代から170年余続くその常識に、諏訪市の寒天製造販売イリセンが挑んでいる。12月中旬から2月中旬に行ってきた寒天作りを、今季は3月に入っても継続中。近年の消費傾向も踏まえて、出来上がりの形を問わなければ可能と判断した。短期間に集中する作業の負担を分散し、若い後継者を呼び込む狙いもあるという。

 県寒天水産加工業協同組合(茅野市)によると、全国に流通する角寒天(棒寒天)は全て諏訪地方産。長さ30センチほどの生寒天を屋外で天日と寒さにさらし、1〜2週間かけて凍ったり解けたりを繰り返して乾燥させる「天出し」と呼ぶ方法で作る。日中でも氷点下近くの冷え込みが続くことが理想といい、関係者は「3月に製造したケースは聞いたことがない」と話す。

 茅野市北山の工場で年間25万本余の角寒天を生産しているイリセン専務の茅野文法さん(36)によると、冷え込みが緩いと仕上がりの形が崩れやすい。ただ、「調理する時はちぎったり、溶かしたりする。消費者はあまり形を気にしないのではないか」と考えた。規格外で、その分、価格が半額ほどの「はねだし」品が近年は好まれることが多いとも言う。

 縮小している諏訪の寒天作りも気にしてきた。同組合によると、1940(昭和15)年ごろに約1200トンあった年間生産量は近年70トンほど。暖冬傾向で冷え込みが続かず、生産期間が短くなったことも主な要因という。2005年に30ほどあった生産者は、16年は12にまで減った。

 こうした状況も踏まえ、最も冷え込む時期に贈答向けなどに形のいい角寒天を、その前後は形にこだわらない商品を作って生産量を維持することを決めた。

 製造期間の延長には、後継者確保の目的もある。天出しに従事する人は、生産量を上げるためになかなか休めない。製造期間に余裕ができ、生産量も確保できれば、大雪などの際は無理せず休むことができる。これまでは県外からの出稼ぎを頼りにしてきたが、より長期間の安定した就労環境づくりも探っている。

 3月に入って天出しした生寒天はまだ仕上がっておらず、やはり均等に凍らない傾向があるというが、販売には耐えられそうという。茅野さんは「若い人の就農も拡大していると聞く。これからの寒天業界も、若い人が目を向けてくれるような産業にしたい」と意気込んでいる。

(3月8日)

長野県のニュース(3月8日)