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新入国禁止令 まだ無理を重ねるのか

 入国禁止令の正当性が大きく揺らいでいるのに、まだ無理を重ねようというのか。

 トランプ米大統領がイスラム圏の特定の国からの入国を規制する新たな大統領令に署名した。

 イランやリビアなど7カ国を対象に1月下旬に出した大統領令はイスラム教徒に対する差別だと厳しく批判された。裁判所から差し止められてもいる。

 今回の大統領令は7カ国からイラクを除いた。既に入国ビザを取得した人や永住権を保有する人も規制対象から外した。

 旧大統領令より規制条件を緩和したとはいっても、難民の受け入れを縮小するなど、前回と骨格は変わっていない。

 野党民主党や市民団体は撤回を求めている。反対運動の激化などで混乱の拡大や米社会の分断が深刻化する恐れがある。

 新たな大統領令に関し、政権幹部は「国家の安全のために不可欠だ」と説明した。テロ対策としての正当性を強調している。

 イラクを外した理由については過激派組織「イスラム国」(IS)掃討で連携しており、「重要な同盟国だ」とした。

 旧大統領令を巡る訴訟で、裁判所はトランプ政権が7カ国の出身者が米国でテロ攻撃をした証拠を示さなかったことを指摘。さらに市民生活に甚大な被害が出ていることを問題視した。

 ホワイトハウスはこの後、入国規制措置を正当化するために国土安全保障省や司法省に資料作成を指示。しかし、国土安保省の情報分析部門は「国籍を米国へのテロの脅威を測る指標とするのは根拠が不十分」とする報告書の草稿をまとめたとされる。

 トランプ政権は、イラクを除外した理由は述べたものの、残りの6カ国を引き続き規制対象にとどめたことについて納得がいく説明をしていない。

 司法や政権内部からも疑義が呈されているのに、トランプ氏はお構いなしだ。過激で排他的な主張に喝采を送る人が今も多いためではないか。先の施政方針演説が国民から好感されたことに気をよくしているのかもしれない。

 米国ではトランプ氏に抗議するデモや集会が続く。その一方、支持派による行動も盛んだ。一部では双方の口論がエスカレートして乱闘にまで発展した。

 トランプ氏の支持率は低迷している。求心力を維持するためには社会の混乱もいとわない。司法も軽視する。大統領としての資質に疑問が膨らむばかりだ。

(3月8日)

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