長野県のニュース

防災ヘリ墜落 山岳救助の危険を思う

 またか、という思いが込み上げる。

 山岳救助のエキスパート9人の命が一度に失われてしまった。悲劇を繰り返さないためにヘリ救助の難しさ、厳しさを改めて心に留めて安全対策を強化しなければならない。

 遭難救助ヘリの事故で真っ先に思い出すのが2010年夏、埼玉県秩父市の山中で起きた埼玉県防災ヘリの墜落だ。機体後部の回転翼(テールローター)を立ち木にぶつけてバランスを崩した。5人が亡くなっている。

 遭難者は沢登りをしている途中で滝つぼに落ちた。ヘリは狭い谷の中で高度を下げ、遭難者をつり上げようとしていた。

 機体の後ろ方向の確認が不十分だった―。運輸安全委員会が2年後にまとめた結論だ。

 この事故を受け、埼玉県議会ではいま遭難救助ヘリを有料化する議論が進んでいる。

 秩父の事故の前年には北ア奥穂高岳で岐阜県警のヘリが岩壁に衝突し、3人が死亡している。

 ヘリは満タンに近い燃料を積んで飛び立った。救助のための空中停止ができるぎりぎりの重量だった。そこに風が吹き、あおられて墜落―。運輸安全委発表による事故の経過である。

 遭難者から救助の要請が入る。ヘリが緊急出動し、つり上げて病院に収容。てきぱきと手順は運んで作業は終了。

 ヘリ救助というとこんなイメージが浮かびがちになる。

 救助隊員が書いた本を読むと実際の作業は過酷である。例えば県警救助隊による「レスキュー最前線」(山と渓谷社)だ。

 「身の危険を感じた経験は数え切れないほどある」「いまだに出動となると緊張で胸がドキドキし『気をつけろよ』『とにかく冷静に判断するんだぞ』と自分自身に言い聞かせている」

 ヘリは風に弱い。風は目に見えない。風がありそうなときは周りを旋回し、気流を確かめてから現場に近づく。燃料が多すぎて機体が重いときは、軽くするためにしばらく周辺を飛んでから救助を進めることもあるという。

 山の高度にも気を使う。高くなるほど空気が薄くなり、ヘリの能力が落ちる。事故のあった鉢伏山の標高は1928・5メートル。気圧は海面の8割ほどになる。

 そうした危険に対処する訓練を重ねてきた9人である。県がヘリによる防災態勢を立て直すには何年もかかるだろう。

 事故の悲惨、重大さをかみしめながら、ご冥福をお祈りします。

(3月8日)

最近の社説