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斜面

「パパは一生懸命、人を助けているのにどうしてパパには助けが来ないの」。県消防防災ヘリコプターが山中に墜落した5日。夜になっても消防隊員の父親の消息が分からず、小学生の娘は泣いていたという

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搭乗していた消防隊員、パイロット、整備士の合わせて9人が帰らぬ人となった。「人助けがしたい」と幼い頃から抱いてきた夢を実らせた、消防団長だった父に憧れた…。体験や出合いは異なっても高い志を持って救命・救助の世界に入った隊員たちだ

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大工原正治さんは14年前、県消防職員意見発表会に出場した。当時28歳。現場で救助が難航し命を救えなかった経験を語り「知識や技術が未熟な自分自身を見つめ直した」と訴えた。日々鍛錬を積んだことだろう。地元の消防本部に戻れば航空隊の経験を熱心に伝授したに違いない

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2004年10月の中越地震。土砂に埋もれた乗用車から2歳男児が92時間ぶりに救出された。応援した長野や松本の救助隊員らが余震が続く斜面で作業を続けた。その子が3年前、御嶽山噴火の救助活動をテレビで見て人を助ける大人になりたいと語った

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救った命がいつか人命救助を担う。亡くなった隊員も多くの命を助けた。今度の雪深い現場で救助隊員は帰りを待つ家族を思い作業したはずだ。願いをかなえられず胸ふさいでいるだろう。命の尊さを思い、今はこうべを垂れるほかない。

(3月8日)

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