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「奇跡のあじさい」長野で花を 東日本大震災6年

 長野市長沼地区の住民が、2011年の東日本大震災でダム湖「藤沼湖」が決壊する大災害が起きた福島県須賀川(すかがわ)市長沼地区の復興のシンボル「奇跡のあじさい」を、育てることになった。アジサイは湖底に眠り、約60年ぶりに復活したとされる。震災6年の11日、長野市から住民30人が現地を訪れ、株を譲り受け、育てた後に湖周辺に植え直す活動を通じ、中山間地で起きた災害の教訓を受け継ぐ。

 湖は1949(昭和24)年に農業用に造られた。11年3月11日の震災直後、湖水が濁流となって下流の集落を襲った。21戸が全壊、7戸が半壊。7人が死亡し、1人が行方不明になった。2年後、住民らが空になったダム湖底を歩く催しの下見で、アジサイの株を発見。専門家の見解で、日光が届く水深15メートルの地点で株の状態のまま休眠していた可能性があると分かった。

 地元の藤沼湖自然公園復興プロジェクト委員長の会社役員深谷武雄さん(71)は、濁流に巻き込まれそうになった1人。株の発見時、「アジサイが『頑張れ』と言ってくれているような気がした」。復興のシンボルにと、全国各地に株分けをして育ててもらう事業を開始。ダムが再建される今春、株を持ち寄ってダム一帯に1万本を植え、アジサイの公園を目指す。

 これまで全国約1200の個人や学校などに株分けした。長野県内に贈るのは初めてで、深谷さんは「親戚付き合いのような気持ちで迎えたい」と言う。

 長野市長沼地区は震災翌年から福島県いわき市を中心に、太鼓演奏などで支援活動を重ねてきた。今回の交流は、地区名が同じ上、両地区に戦国大名上杉景勝の家臣島津忠直が城主を務めた長沼城がかつてあり、住民団体が城跡を生かした地域活性化を目指すという共通点が背景にある。

 プロジェクト委から譲り受けた株を、長野市長沼りんごホール(長沼公民館)の敷地内に植え、犠牲者の追悼や復興を願って育てる。増えた株を来年以降に藤沼湖周辺に植え直す。

 東日本大震災では沿岸部の被害が甚大で、藤沼湖の災害はあまり知られていない。長沼りんごホールの館長、宮沢秀幸さん(69)も「内陸部でこれほど大きな被害があったとは知らなかった」。長野市内でも河川が氾濫する洪水の歴史があることを踏まえ、「ひとごとではいられない。教訓を学び、後世に受け継いでいかないといけない」と話している。

 11日は長沼城跡を訪問し、藤沼湖を視察。太鼓などのコンサートを開いて親睦を深める。

(3月9日)

長野県のニュース(3月9日)