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憲法の岐路 稲田防衛相 見過ごせない勅語発言

 憲法擁護義務を負う大臣としての適格性を疑わせる発言だ。

 稲田朋美防衛相が国会で、戦前の教育の基本理念を示した教育勅語について「その精神は取り戻すべきだ」と述べた。

 教育勅語は明治憲法とセットで天皇を中心とする体制の軸になり、昭和期には軍国主義と結び付いた。国民主権と平和主義の現憲法と相いれない。

 発言を速やかに撤回するよう、防衛相に求める。

 学校法人「森友学園」が運営する幼稚園の教育を巡る質問に対する答弁である。教育勅語について「全くの誤りというのは違うと思う」「親孝行や友達を大切にするといった核の部分は今も大切だ。核の部分は取り戻すべきだ」などと述べている。

 防衛相が言うように、教育勅語には親孝行や友情の大切さに触れた部分がある。そこに限って見れば、今の時代の価値観と両立する余地があるかもしれない。

 しかし勅語は続いて「一旦緩急アレバ義勇公ニ奉ジ、以テ天壌無窮ノ皇運ヲ扶翼スベシ」と述べる。戦争が起きたら国と天皇のために働け、ということだ。

 全体を読めば、国家に奉仕する国民の徳目としての親孝行であり、友情だと分かる。

 勅語には「憲法を重んぜよ」といった意味のことも書いてある。ここでいう憲法はむろん明治憲法のことだ。明治憲法には、日本は天皇が治める国であり、天皇は陸海軍を統帥する、とある。

 教育勅語と明治憲法はともに1890年に発布、施行された。併せて読むと、勅語の意図するところがさらにはっきりする。

 終戦から3年後の1948年、衆院は教育勅語の「排除」、参院は「失効確認」を決議している。決議した理由は、勅語が引き続き有効であるかの誤解が国民の間にあったためだ。

 衆院決議は言う。教育勅語は「基本的人権を損ない、国際信義に対して疑点を残す元となる」。なので、憲法違反の法令を無効とする憲法98条に従って排除する。説得力ある言い方だ。

 教育勅語を取り戻すべき規範と見なすのは、どこをどう解釈しても困難だ。防衛相の認識は今の憲法の基本理念とかけ離れている。稲田氏は昨年12月、憲法上の問題も指摘される靖国神社の参拝を強行した。大臣の職を任せられるのか、疑問は膨らむばかりだ。

(3月10日)

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