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初老の堅物教師ラートは、教え子が入り浸る安キャバレーに抗議に行く。ところが、美しい脚をあらわに歌う踊り子ローラに一目ぼれ。とりこになってついには教職をなげうち身を滅ぼす。往年のドイツ映画「嘆きの天使」である

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マレーネ・ディートリヒを一躍人気女優にした名画が、なぜ物騒な盗聴の仕組みの名などになったのか。CIA(米中央情報局)が英国の諜報機関と共同開発したという。インターネットに接続したテレビに侵入し、電源が切れたように装って会話を盗み聞く

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内部告発サイト「ウィキリークス」が先日公開したCIAの内部文書で明るみに出た。米国内外のあらゆる通話や通信に及ぶ秘密裏の情報収集をCIA職員だったスノーデン氏が暴いてから4年。監視社会は深化し、より巧妙な形で日常を侵しつつある

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その不気味さにも増して怖いのは、さほど驚きもせず受け流してしまう感覚の鈍磨だろう。日本でも今や至る所にある監視カメラを多くの人は気に留めない。通信傍受の対象犯罪が広げられ、共謀罪によって監視強化の道はさらに踏みならされようとしている

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映画の公開から3年後、政権を握ったナチスは「非ドイツ的」な著作を燃やし、「退廃芸術」を排除した。協力要請を拒否したディートリヒは国に戻らなかった。映画と同じ名の「嘆きの天使」もまた、暗い時代の前触れに思えてくる。

(3月13日)

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