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自主避難者 実態に応じ支援継続を

 「復興」を名目にした支援打ち切りが被災者を苦しめる―。当初からあった懸念が現実になりつつある。

 東京電力福島第1原発事故で、避難区域外から自主避難した人に対する支援が今月末で打ち切られる。福島県が国の財源で民間の借り上げ住宅を無償で提供してきた。対象は約1万世帯に及ぶ。

 自主避難者には東電からの定期的な賠償金はない。住宅の無償提供は唯一の公的支援だ。

 打ち切りは「インフラ整備や除染が進み、生活環境が整った」ことが理由だ。帰還を促し、復興を進めたい国の思惑が背景にある。

 自主避難者の生活実態はさまざまで、帰りたくても帰れない人もいる。避難者の立場に立った柔軟な対応が必要だ。

 福島県の2月末の発表だと、250世帯の住む家が決まっていない。昨年12月の約千世帯から縮小はした。それでも避難者を支援する「避難の協同センター」には「住まいが決まらない」「避難生活で貯金が尽きた」などの相談が相次いでいる。

 各地の公営住宅は条件が厳しく、入居できないケースも多い。民間住宅でも「福島の人は難しい」と賃貸契約の更新を拒まれたケースがあったという。

 福島県は避難者の引っ越し費用補助などの支援策をとる。他自治体でも独自に住宅の無償提供を継続するケースがある。長野県は低所得の自主避難者が県内に引っ越す場合、最大10万円を補助する。

 独自支援が相次ぐのは避難者の経済状況が切迫しているためだ。このままでは避難先によって支援に差が出る。国は実情を直視し、支援方法を再検討するべきだ。

 「新たな自主避難者」が生まれる懸念もある。

 福島県の飯舘村など4町村では3月末から4月、放射線量が高い帰還困難区域を除き避難指示が解除される。これまで解除された地域の帰還率は1割程度だ。放射線による健康被害や生活基盤への不安は根強い。新たに解除されても帰還は進まないだろう。

 避難指示の解除に伴い、住民への月10万円の慰謝料の支払いも17年度末に一律終了する。帰還しない人は「自主避難者」となる。支援のあり方を検討するべきだ。

 11日に開いた政府主催の追悼式で、安倍晋三首相は「復興の進展に応じた切れ目のない支援に力を注ぐ」と述べた。政府のいう「復興の進展」は、被災者の実感と合っていない。政府は被災者の声に真摯(しんし)に耳を傾けるべきだ。

(3月13日)

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