長野県のニュース

性犯罪厳罰化 泣き寝入りさせぬ社会に

 被害者の心に深い傷を残す性犯罪は「魂の殺人」と言われる。泣き寝入りせず、声を上げられる社会にしていく一歩にしたい。

 性犯罪の処罰規定を大幅に改める刑法改正案を政府が国会に提出した。柱の一つが、強姦(ごうかん)罪などで「親告罪」の規定を削除することだ。起訴するのに被害者の告訴が要らなくなる。

 処罰を求めるかどうかの判断を委ねられることは、被害者の精神的な重荷になる。周囲に反対されて告訴できない場合もある。救われる被害者は多いだろう。

 一方で、本人の意向に関わらず事件化されることへの懸念もある。加害者とは一切関わりたくないと思う人もいる。望まない場合は立件しないよう求める声が当事者から出ている。

 また、告訴の負担はなくなっても、捜査機関の事情聴取や法廷での証言に応じる必要はある。被害者の意思を尊重するとともに、プライバシーの保護に十分配慮することが欠かせない。

 相談窓口や警察で心ない対応をされて再び傷つく人もいる。安心して相談できるよう、被害者を支えることは何より重要だ。

 改正案は、強姦罪を「強制性交等罪」に改め、女性に限っていた被害者に男性を含めるほか、性交に類似する行為も対象にする。法定刑は現行の懲役3年以上を5年以上に引き上げる。

 尊厳を侵す罪の重さを考えれば、強盗罪の懲役5年以上を下回っている刑の不均衡を是正するのは当然だろう。ただ、厳罰化は再犯の防止や性犯罪の抑止に必ずしもつながるわけではない。

 精神の不調を抱えた加害者は多く、性犯罪の再犯率は高い。心理療法を取り入れた更生プログラムも刑務所で行われているが、態勢は十分でない。充実を図り、更生の取り組みを強めたい。

 専門的な治療を要する場合、刑務所での対応は難しい。刑期の途中で社会に戻って保護観察を受ける「刑の一部執行猶予」制度などにより、治療に専念させることも検討すべきだろう。

 このほか改正案は、子どもと同居する親などの「監護者」が支配的な立場を利用して性行為をした場合、暴行や脅迫がなくても処罰する規定を新たに設ける。性的虐待を念頭に置いたものだ。

 子どもの性被害は、本人が訴えられなかったりして、表に出にくい。そのことも踏まえ、どう子どもを守るか。刑罰とは別にできることを、あらためて社会で考えていくきっかけにしたい。

(3月14日)

最近の社説