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御嶽災害訴訟 全ての事実を法廷に

 2014年秋の御嶽山噴火災害を巡る裁判が地裁松本支部で始まった。犠牲者の遺族が国と県を相手取って起こした損害賠償請求訴訟である。

 犠牲はなぜ防げなかったのか、どうすれば防災体制を強化できるのか―。この一点を見据えて全ての事実、知見を法廷に出し、吟味する裁判にしてもらいたい。

 第1回口頭弁論では2人の遺族が意見陳述した。

 夫を亡くした伊藤ひろ美さんは「私たち家族の色も味も感動も奪われた」と苦しみを訴えた。地震増加を受けて気象庁が担当者を現地に派遣していれば、登山者が大勢いることが分かり、「危機感は持てたはず」と述べている。

 荒井寿雄さんは亡くなった次男が今も夢に出てくると陳述、「切なくてたまらない」と声を震わせた。「裁判がこれからの御嶽の安全につながることを願っている」と締めくくった。

 争点は大きく言って二つある。第一は、気象庁が噴火の兆候を地震計でつかんでいたのに警戒レベルを引き上げなかったこと。第二に、県は山頂付近と山麓の2地点に設けた地震計の故障を噴火前に知りながらそのままにしたこと。その是非である。

 噴火の後、国は山頂付近の観測機器を強化したり、急な噴火を登山者らに知らせる火山速報の仕組みを作ったりしている。噴火の前になぜできなかったのか、との思いが遺族にはある。

 火山活動は分からないことが多い。よほど条件が整った場合でなければ噴火予知は無理、との見方もある。裁判所にとっても難しい判断になるだろう。

 原告側の弁護士はこんなことを言っている。訴訟の最大の目的は賠償ではない。検証し、将来への教訓とすることだ、と。

 裁判に加わっていない遺族、家族にも共通する思いだろう。しっかり受け止めたい。

 火山研究者には、実り多い裁判になるような手助けを期待する。

 今度の災害が裁判になった背景には、開かれた形で検証が行われていないことに遺族、家族が不信感を募らせていることもある。本来なら国が第三者による調査委員会を設置して、気象庁の判断や研究・予知体制の問題点を洗い出してもよかった。

 国と県は自分に不都合なことも含めて法廷に出すべきだ。火山防災体制を充実、前進させる道筋を、国、県と遺族、弁護士、研究者、裁判官が一緒に追求する裁判になればいい。

(3月17日)

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