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天皇退位見解 国民の総意と言えるか

 天皇陛下の退位を巡る法整備について、陛下一代限りの特例法とする「国会見解」が決まった。きのう開かれた各党派の全体会議で衆参両院の正副議長案に自由党以外が賛同した。

 退位のあり方を示す法の姿は、国会という国民に開かれた場で議論する前に固まったことになる。

 象徴天皇の地位は国民の総意に基づくと憲法は定める。政党間の調整だけで「国民の総意」と言えるのか、疑問がある。

 国会見解は、安倍晋三首相が正副議長に意見調整を求めたのが発端だ。行政府の長が立法府の長に要請し、受けるという、三権分立に照らして異例の展開だった。

 自民、公明の与党は、将来にわたる退位の要件を定めるのは困難などの理由で特例法での対応を主張した。

 憲法は皇位の継承は皇室典範の定めによるとしている。これに適合させるため、民進などの野党は典範の改正による退位の恒久制度化を求めた。

 各党の調整は「政争の具にしない」(安倍首相)、「静かな環境で」(大島理森衆院議長)という活発な議論をけん制する雰囲気で行われた。民主主義における象徴天皇制の論議にそぐわない環境だった。その土俵に上がり、妥協した野党の責任も大きい。

 与野党の折衷案ともいえる国会見解の内容にも問題がある。

 皇室典範の付則に、特例法は典範と「一体」などと関係を示す規定を置く。これで違憲との疑義が払拭(ふっしょく)されるとしている。

 同時に、この規定で「退位は例外的措置であること」と「将来の退位の先例になり得ること」が明らかになる、とも説明している。

 矛盾することがなぜ両立するのか。与野党を妥協させるため、国民に分かりにくい表現になったことは否めない。

 特例法には「退位に関する国民の理解と共感」を書き込むのが適当だとしている。国会はいつ国民の声を聞いたのか。

 確かに報道各社の世論調査では陛下の退位を認める意見が圧倒的ではある。ただ、世調に基づくなら、一代限りではなく、将来の天皇全てが退位できるような制度を求める意見が多いのも事実だ。特例法が「理解」されているとは言い難い。

 政府は見解を基に法案を作成し、5月にも国会に提出する。このまま国会審議を形ばかりにしてはならない。国民の声を受け止める機会を設け、法案の問題点をともに考える自由な議論を求める。

(3月18日)

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