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福島訴訟判決 過失の認定に向き合え

 生活基盤を奪われた原発事故の被災者と、国民の疑問に寄り添った意義のある判決だ。

 東京電力福島第1原発の事故の避難者137人が、国と東電に損害賠償を求めた集団訴訟である。前橋地裁が「巨大津波の予見は可能で事故は防げた」として国と東電の過失を認め、計3800万円余の賠償を命じた。国と東電の過失が裁判で認められたのは初めてのことだ。

 事故から6年が経過しても、約8万人が避難したままだ。事故処理費は21兆円を超える見通しだ。それなのに事故の責任は不明確なまま放置されている。

 避難者による集団訴訟は約30件起こされている。判決は他の訴訟にも影響を与えよう。

 事故を二度と起こさないためには、原因を究明し責任を明確にすることが必要だ。国と東電は判決に真摯(しんし)に向き合い、対策が不十分だったことを認めるべきだ。

 国の指針に基づく慰謝料は、避難指示区域からの避難者で月額10万円などだ。避難指示が解除された地域の住民は来年3月で打ち切られる。慰謝料の額や支払期間も再検討する必要がある。

 訴訟の争点は▽巨大津波を予見し、事故を回避できたか▽東電の賠償水準は妥当か―などだった。

 鍵を握ったのが、政府地震調査研究推進本部が2002年にまとめた地震予測の長期評価だ。東電がそれを基に08年に実施した試算で、海面から10メートルの原発敷地を上回る津波が来るとの結果が出た。

 判決は、長期評価の数カ月後には津波の予見が可能だったと判断し、対策を取らなかった過失を認めた。国に対しても「東電に回避措置を講じさせていれば事故を防げた」と判断した。

 原発が事故を起こせば多大な影響が出る。万が一を想定した対策が欠かせないのに東電と国は怠った。判決はまっとうだ。

 02年の長期評価をまとめた島崎邦彦・原子力規制委員会前委員長代理は、関西電力大飯原発について、関電が地震想定を過小評価していると指摘している。

 それなのに規制委は「(指摘内容は)専門家の間で知見が固まっていない」として、再稼働を認めている。規制委の見解は、東電が今回の訴訟で長期評価に対して主張した内容とほぼ同じだ。

 判決は「東電は安全より経済合理性を優先させた」と断罪した。他の電力会社、規制委も同様ではないか。想定できる災害に対する万全の対策が取れているのか。全原発を検証するべきである。

(3月18日)

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