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共謀罪法案 なぜ必要か分からない

 政府が国会に提出する共謀罪の法案は、体裁こそ改めたものの、根本にある危うさは変わっていない。話し合っただけで処罰することは、内心の自由を侵し、市民の活動を抑圧して民主主義の根幹を損ねかねない。

 国会での議論で、懸念は一層膨らんでいる。それでも政府は今国会で成立を目指す構えだ。与党の了承を取りつけたことを受け、21日にも法案を閣議決定する。

 当初の案で676に上った対象犯罪は、半分以下の277に絞り込まれた。とはいえ、なお広範である。処罰の枠組みが一気に広がることは変わらない。

 刑罰権の乱用による人権侵害を防ぐため、手厚い規定を置く憲法の考え方と相いれない。行為を罰することを基本とする刑法の法体系は土台から崩れてしまう。

 政府は、国際組織犯罪防止条約を締結するのに法制化が不可欠と説明してきた。条約は、懲役・禁錮4年以上の犯罪の共謀を国内法で処罰するよう求めている。676はそれに基づいた数だ。

 2005年には、対象犯罪を選別することは条約上できないとの答弁書を閣議決定している。なぜ今回は減らせるのか。従来の政府見解との整合性を欠き、選別の根拠も明確でない。

 共謀罪法案は過去3度、国会で廃案になっている。政府は今回、東京五輪に向けたテロ対策を前面に出して再び立法に動いた。

 けれども、法案を与党に示した段階で、条文のどこにも「テロ」の語はなかった。共謀罪を言い換えた「テロ等準備罪」も、あくまで呼び名である。

 五輪やテロ対策を名目に、法案の危うさを隠そうする姿勢はあらわだ。適用対象を定めた条文を修正し、「テロリズム集団その他の」を加えたものの、何がテロ集団にあたるかの定義はない。

 条約は、国境を越えた経済犯罪への対処を主眼としている。金銭や物質的利益を得る目的の犯罪集団が対象だ。テロ対策と結びつけるのは元々無理がある。また、国内法の基本原則に反する法整備を求めているわけではない。

 筋が通らぬことばかりである。なぜ立法を目指すのか。政府が説明を重ねるほど疑念が募る。都合のいい理屈や要領を得ない答弁も目立つ。法相は、議論を封じるかのような文書まで配布した。

 共謀を察知し、立件するには、監視や密告が不可欠だ。戦時下のような息苦しい社会を再び招きかねない。政府は法案提出を断念すべきである。

(3月20日)

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