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地元では「きしめ」と呼び「生酒女」と書く。飯田市の遠山谷に伝わる霜月祭りで、程野地区の氏子らがつくる甘酒のことだ。文字通り女性向きの酒という意味だろうかと思ったら、単なる当て字という。きしめの神事が古い形で続くのはここだけになった

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仕込みは毎年12月1日。棒をきりもみして火をおこし神社のかまどで米を炊く。火種はサルノコシカケを擦りつぶして使う。ご飯にこうじを混ぜておけに移し、しめ縄を巻いて14日の本祭りまで寝かせる。これほど手間をかけた甘酒はほかにないだろう

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祭りなどハレの日に飲むイメージが強い。振る舞い行事は各地にある。上田市の石舟自治会が開く祭りは用水路の安全を願い水神様に甘酒を供える。子どもが流される事故が多かったためという。甘い物が貴重な時代の楽しみだった

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いま再び健康志向から甘酒が見直されている。ブドウ糖、ビタミン、アミノ酸など栄養素がバランス良く「飲む点滴」とも言われる。とりわけ美容にいいと女性に人気だ。清酒やみそメーカーも販売に乗り出し種類が多彩になった

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ブームのきっかけは大震災後、塩こうじなど省エネの発酵食品が注目されたこと。遅ればせながらわが家でも甘酒をつくり始めた。炊飯器や保温鍋で簡単にできる。腕のカサカサが消えたと評判がいい。古来の飲料が季節にかかわりなく定着しそうな勢いである。

(3月25日)

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