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核禁止条約 被爆国の使命に背く

 核兵器の惨禍を知る国の政府が取るべき対応ではない。被爆国の責務や使命をどう考えているのか。

 核兵器禁止条約の制定を目指す交渉に、日本政府代表の高見沢将林軍縮大使が不参加を表明した。

 米ニューヨークの国連本部で始まった会議で、大使は核保有国が参加しないまま交渉を進めれば国際社会の分断が深まるとし「参加するのは困難」と語った。

 会議で条約制定を訴えた日本原水爆被害者団体協議会の藤森俊希事務局次長=茅野市=は「唯一の戦争被爆国の政府が言うべきことではない」と批判した。

 その通りである。日本が掲げてきた非核の旗印が揺らぐことで核兵器廃絶への発言力は大きく損なわれるだろう。何より、国際社会で高まる核軍縮の流れに水を差すことになる。

 交渉は今月31日でいったん閉じた後、6〜7月にも行われる。昨年12月の国連総会では113カ国が交渉開始に賛成した。推進派は7月までの条約案作成を目指している。論議が順調に進み、禁止条約に理解する国がさらに増えれば成果が期待できる。

 一方、米英仏ロ中の核保有5カ国のほか、事実上の核保有国であるインド、パキスタン、北朝鮮などは交渉に参加しない。

 100カ国以上の賛同で条約が実現したとしても、保有国は加わらないだろう。それでも条約で核を非人道兵器と明確に位置付けることができれば、無視できない圧力になる。保有国包囲網としての役割が期待できる。

 問われるのは日本の姿勢だ。交渉参加を巡って政府は揺れ続けてきた。被爆地の広島から選出された岸田文雄外相は昨年秋、交渉参加の意思を表明した。

 北朝鮮が弾道ミサイルを発射し、日本の排他的経済水域(EEZ)内に落下させると、明言を避けるようになった。

 トランプ米政権も日本が交渉に参加することに強い嫌悪感を伝えてきた。最終的に政府は初日の会議だけ出席し、2日目以降の交渉には参加しないことで米側の理解を得たとされる。

 日本政府はこれまで核保有国と非保有国との「橋渡し役」になると公言してきた。交渉への不参加は、その役割を放棄することになるのではないか。無責任と言わざるを得ない。

 多くの被爆者から憤りの声が上がっている。政府は、その声と真摯(しんし)に向き合うべきだ。交渉への参加を改めて求める。

(3月30日)

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