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前大統領逮捕 政治の悪弊を断つとき

 韓国の朴槿恵前大統領が、同国最大の企業集団から巨額の賄賂を受け取った容疑などで逮捕された。

 親友による国政介入事件に端を発した一連の疑惑で昨年12月に国会で弾劾訴追され、憲法裁判所によって先月罷免されていた。

 大統領の罷免は1948年の建国以来初めて。大統領経験者の逮捕は3人目となる。

 なぜ、このような事態を招いたのか。韓国では政治と経済の癒着や大統領周辺の利権享受、縁故人事といった問題が絶えない。

 根っこには、政治の私物化を招きやすい大統領への過度な権限集中があるとされる。

 今年は韓国の民主化宣言から30年の節目だ。再発を防止し、政治の悪弊を断つには、制度面や意識面での改革が必要になる。そのためにも、今回の事件の背景を広く深く掘り下げ、全容を解明しなくてはならない。

 東西冷戦を背景に、韓国と北朝鮮がぶつかった1950〜53年の朝鮮戦争は、今も休戦状態のままだ。緊張状態が続いているため、韓国の大統領には内政、外交、安全保障など、各分野で強大な権限が与えられている。

 しかも、有権者による直接選挙で選ばれるため、ともすれば独善的な姿勢に傾きやすい。朴容疑者もそうだった。政権運営では自身の「原則」にこだわり、国民には丁寧に説明しなかった。

 こうしたかたくなな姿勢があだとなり、昨年の総選挙で与党は敗北している。国政私物化疑惑が浮上した後も権力維持と刑事責任の回避に明け暮れ、民意から見放されることになった。

 その付けは大きい。国政はまひし、米国のトランプ政権誕生や北朝鮮の弾道ミサイル発射などで積極的に対応できなかった。社会の分断も生んでいる。

 父の故朴正熙大統領が築いた支持基盤を背景に、保守的な政治勢力として長年にわたり政界に影響力を行使してきた。今も朴正熙氏を崇拝し、朴容疑者を支持する人が少なくない。

 今回の事件は「朴派」の時代に幕が下りたことを意味するが、保守層が時代に合った変革を自ら成し遂げられるのか、定かでない。実現できなければ、社会にしこりを残すこともあり得る。

 朴容疑者の逮捕は、韓国政治に残る古い体質の中で、法と民主主義が機能したといえる。一方で、世論に迎合しやすい捜査に危うさはないか。その真価が問われるのはこれからだ。

(4月1日)

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