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安保をただす 敵基地攻撃 戦争を呼び込む危うさ

 いよいよ一線を越えようとしているのではないか。自民党が「敵基地攻撃能力」の保有に向けて検討を始めるよう求める提言を安倍晋三首相に出した。

 ミサイル防衛についての提言である。北朝鮮の弾道ミサイルに対して発射拠点を破壊するための装備を持とうというものだ。巡航ミサイルなどを想定している。「専守防衛」を旨とする自衛隊が備えるべき能力ではない。

 提言は北朝鮮の脅威が「新たな段階」に入ったとし、日米同盟の対処力向上のため、敵基地攻撃能力の必要性を指摘している。

 政府の憲法解釈では、他に防ぐ手段がない場合に必要最小限度で基地をたたくことは自衛の範囲に含まれ、可能とされる。それでも歴代の政権は専守防衛の立場から保有してこなかった。

 提言を受け取った首相は保有の是非に言及していない。一方、菅義偉官房長官は記者会見で「対処能力の総合的な向上のため、種々の検討を行いたい」とした。

 自民は2013年の「防衛計画の大綱」策定に向けて出した提言など、かねて敵基地攻撃能力の必要性を唱えてきた。今回は一段と現実味を帯びている。いつものことと済ませられない。

 トランプ米政権は同盟国に対して安全保障面で「応分の負担」を求めている。2月の日米首脳会談での共同声明は、日米同盟について日本が「より大きな役割、責任を果たす」としていた。

 首相は国会で「わが国としても防衛力を強化し、果たし得る役割の拡大を図る」と述べている。

 攻撃は米国が担い、日本は防衛に徹するという従来の方針を転換する考えなのではないか。「保有ありき」で進みかねない。

 弾道ミサイル発射や核実験を繰り返すことで北朝鮮が技術を向上させているのは確かだろう。

 だからといって他国の基地をたたく能力を備えることが日本の安全に資するのか。軍拡競争がエスカレートするようだと、かえって東アジアの緊張を高める。的確に狙いを定められるのか、どれほどの装備が必要になるのか、効果や費用の点でも疑問符が付く。

 集団的自衛権を解禁した安全保障関連法の審議で政府は敵基地攻撃も可能としていた。保有すれば日本が攻撃されていない段階でも他国を攻撃できることになる。戦争を呼び込む危うさもはらんでいる。認めることはできない。

(4月3日)

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