長野県のニュース

斜面

宇多田ヒカルさんのヒット曲「花束を君に」は、亡き母藤圭子さんへの思いが詰まっている。2011年から音楽活動を休止、その間に母の死、再婚、長男の出産を経験した。昨年、この曲を収めたアルバムを発表して活動を再開した

   ◆

〈一人で歩いたつもりの道でも/始まりはあなただった〉。「道」という曲の一節だ。失って初めて自分を支えてくれた大切な存在だったと知る。いとおしさや感謝は次のステージへの力になるのだろう。浅田真央さんも6年前、母匡子(きょうこ)さんを亡くした

   ◆

容態急変の知らせを受け遠征先のカナダから帰国したが間に合わなかった。2週間後、全日本選手権に出場して優勝した。「母は一番近くにいるような気がした」。記者会見でそう答え、目を潤ませた。5歳でスケートを始めた娘を匡子さんはいつもリンクサイドから支えていた

   ◆

2014年のソチ五輪。ショートプログラムの失敗から立ち直り、フリーを完璧な演技で終えた。ラフマニノフのピアノ協奏曲に乗った情感あふれる舞いは圧巻だった。直後の世界選手権で優勝している。匡子さんとの約束は十分果たしたのではないか

   ◆

10日、練習拠点のスケートセンターを訪れ、佐藤信夫コーチに「終わりにしたい」と切り出したという。昨年末の全日本は12位。トリプルアクセルを跳び続けた膝は悲鳴を上げ、気力もなくしていた。この10年、たくさんの夢をもらった。感謝の花束を贈りたい。真央ちゃん、お疲れさま。

(4月12日)

最近の斜面