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金に苦しんだ石川啄木は「借金メモ」を残した。そこに釧路市の4カ所の料亭と、7円、12円、22円、4円の記載がある。啄木は1908(明治41)年1月〜4月、釧路で新聞記者として活躍しながら、料亭通いや芸者遊びにおぼれた

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小樽に残した妻子に仕送りもせず、給料をつぎ込んだうえ「つけ」で遊んでいたらしい。1円は今の1万円ぐらいだろうか。揚げ句に踏み倒したまま上京した。啄木は20代初めの1年間、北海道を転々とした。釧路を最後に意を決し文壇を目指したのだ

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啄木の時代と同じだった契約のルールがやっと見直される。民法改正案だ。「つけ」による飲食店の未払い金もその一つ。請求できる期限が1年と短かった飲食代の消滅時効は、まちまちだった他業種とともに5年に統一される。踏み倒しに泣き寝入りしてきた店は減るだろうか

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現代のつけ払いは国内最大級の衣料品通販サイトが新しいサービスとして始めた。一定金額を限度に購入から2カ月以内に代金を支払う方法を選べる。手数料がかかるが手続きは煩雑ではなく、クレジットカードを持っていない若年層にも利用を広げる

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啄木の借金は、釧路啄木会会長の北畠立朴さんに教わった。釧路では下宿代などを合わせれば170円に上るが、取り立ての動きは起きなかった。「出世払い」が許されていた時代だ。放蕩(ほうとう)生活は文学の肥やしになった。現代はギャンブルなど誘惑も多い。欲の落とし穴はずっと深く怖い。

(4月14日)

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