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30キロ圏内の全自治体に 原発の同意権

 佐賀県玄海町の九州電力玄海原発3、4号機の再稼働に向けて、「地元同意」の手続きが進んでいる。

 玄海原発は今年1月に原子力規制委員会の再稼働に向けた審査に合格し、玄海町は3月に再稼働に同意。佐賀県議会も今月13日に容認する決議案を可決した。同県の山口祥義知事は今月中にも同意を表明する見通しになっている。

 知事が容認すると、地元同意を巡る手続きは終了する。使用前検査などを通過すれば、九電は玄海原発を再稼働できる。

 今回の手続きは、地元同意を巡る矛盾を際立たせている。

 原発から半径30キロ圏内にある自治体には避難計画の策定が義務付けられている。東京電力福島第1原発の事故で住民避難が広域化したことを受けた措置である。

 玄海原発の30キロ圏内には佐賀、福岡、長崎3県の7市1町がある。このうち、長崎県平戸、松浦、壱岐市と佐賀県伊万里市の市長が、再稼働に反対を表明した。主な理由は避難に対する不安だ。

 特に玄界灘に浮かぶ大小20ほどの離島の避難ルートは実効性に欠ける。人口2万7千人の壱岐島では、30キロ圏内に入る島南部の住民が島北部に移動するという。それで大丈夫なのか。風向きによっては島民の逃げ場はなくなる。

 全域が圏内の16の離島は、荒天だと住民が島に取り残される。政府が整備する避難施設は設備の不備も指摘されている。

 事故が起きれば放射能汚染は自治体の境界を越える。それなのに地元同意の権利は原発が立地する玄海町と佐賀県にしかない。不合理であり、早急に見直すべきだ。

 ほかの原発の周辺自治体でも、同意権の要求は強い。関西電力高浜原発3、4号機(福井県)の再稼働では30キロ圏内に入る京都、滋賀両府県の知事が立地自治体と同様の同意権を求めた。電源開発大間原発(青森県)では、圏内の北海道函館市が建設差し止め訴訟を起こしている。

 問題は「地元同意」の必要性や範囲が、法令で明確に規定されていないことにある。政府のエネルギー基本計画に基づいた実質的条件にすぎず、地元同意の範囲の判断は電力会社に丸投げされている。範囲を広げると再稼働のハードルが高くなるため、政府と電力会社は拡大に及び腰だ。

 考えるべきことは、民意を十分にくみ取ることだ。法制でルールを明確化し、少なくても原発から30キロ圏内の自治体全てが同意権を持てるよう定める必要がある。

(4月17日)

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