長野県のニュース

英国総選挙 メイ首相の危険な賭け

 欧州連合(EU)との離脱交渉を前に、英国のメイ首相が思い切った行動に出た。

 2020年に予定されていた下院選(総選挙)を、今年6月8日に前倒しした。与党保守党の議席を増やして政権の基盤を固め、首相の交渉路線に反対する勢力を抑え込む狙いとみられる。

 英国内では、離脱支持が残留支持を上回っているものの、市民からは、国の先行きが見えないとの不安の声が上がっている。総選挙という「賭け」が状況の打開につながるのだろうか。

 英国は、昨年6月の国民投票の結果を受けてEU離脱を決めた。キャメロン氏の辞任後、首相に就いたメイ氏は、域内無関税の単一市場からも撤退する「完全離脱」を表明した。離脱の連鎖を警戒し、単一市場残留という好条件を認めないEU側の厳しい姿勢が背景にあった。

 離脱交渉も難航が予想される。EUは未払いの分担金など600億ユーロ(約7兆2千億円)の“手切れ金”を英国に要求しているという。協議が進展しなければ、貿易協定など新たな関係づくりの話し合いには入らない考えだ。

 交渉期間は原則2年。通商関係を練り直すには10年はかかるとの予測もある。貿易協定が整わない間は、例えば車の輸出に10%の関税がかかる。英国の輸出額の半分をEU加盟国向けが占めている。経済的打撃は避けられそうにない。EU以外の国々との貿易協定締結も離脱後になる。

 メイ首相にとっては、就任後初の選挙となる。これまで「世界各国とのつながりを強め、グローバルな英国を目指す」とうたってきた。めぼしい政策は乏しく、離脱後の市民の仕事や生活がどう変わるのかが、うかがえない。

 最大野党の労働党は、規制の激変を避け、単一市場には残る「ソフトブレグジット(穏やかな離脱)」を主張している。どのような条件でEUの譲歩を引き出すつもりなのか。

 スコットランドで英国からの独立の機運が再燃し、北アイルランドでも隣国アイルランドとの統合を探る動きがある。分裂を避けるには、EU残留の支持層にも響く将来構想の提示が必要だろう。

 昨年の国民投票は、EU加盟国の債務危機、移民や難民の大量流入、テロの脅威が顕在化する中で実施され、「感情か経済かの選択」とも言われた。総選挙に踏み切る以上、中身の濃い論戦を展開し、有権者が進路を冷静に判断できる機会にしてほしい。

(4月20日)

最近の社説