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リニアの掘削 「丁寧な説明」はどこへ

 これがJR東海の言う「丁寧な説明」なのだろうか。

 リニア中央新幹線のトンネル掘削が下伊那郡大鹿村で始まった。南アルプストンネル長野工区(8・4キロ)の作業用トンネルである。

 工事が始まった除山非常口(坑口)の反対斜面にある釜沢地区では、発破作業が始まると騒音や振動などの影響が懸念される。

 それなのに、工事に当たる共同企業体(JV)が住民に掘削開始を知らせたのは電子メールのみだ。配信は掘削開始前日の26日夜で、一見して理解できる内容ではなかったという。

 メールは希望者に、道路改良工事に伴う通行止めの時間帯などを知らせるため配信している。受信していた地区の自治会長は掘削開始に気付かなかった。JRが村に掘削開始を電話で知らせたのも26日の夕方だった。

 JR東海の柘植康英社長は住民不安が根強いことに対し、「丁寧に話し合いをして、話を聞き、説明し、納得していただく努力が不可欠」としていたはずだ。

 地区の全員が参加できる説明会を開き、掘削開始や今後の見通し、工事の影響などを詳細に説明するのが筋だ。今回のような対応では、工事に対する住民の不安や不満は解消しない。

 掘削工事では、残土処理の問題も先送りされたままだ。

 大鹿村で生じる残土は、東京ドーム約2・4個分に当たる約300万立方メートルになる。多くは搬出先が決まっていない。JRは村内に残土を仮置きする予定だ。

 村内には仮置き場がそのまま最終処分地になるのでは、との懸念も根強い。将来計画を示さないまま掘削を続ければ、不安はさらに高まる。大鹿村だけでなく、県内の沿線から出る残土計974万立方メートルの処分地も多くは決まっていない。早急に解決しなければならない問題だ。

 柘植社長は1月に阿部守一知事と会談した際、残土埋め立て後の管理には関与しないとしていた当初の方針を変更し、埋め立て後の維持管理も「責任を持った対応」を検討する方針を明らかにした。当然の判断といえる。

 伊那谷は1961(昭和36)年の三六災害で、広い範囲が土砂災害に見舞われた。住民の不安は根強い。JRは全ての残土処分候補地について、埋め立て後の具体的な管理方法を早急に明らかにする必要がある。住民の不安や要望に寄り添わなければ、円滑な工事は見通せない。

(4月29日)

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