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斜面

この大型連休はおおむね行楽日和に恵まれそうとの予報である。ドライブの道すがら目を引くのは色鮮やかなハナモモだ。本数の多さに「誰が植えたのだろう」と思わずにはいられない。信濃路の見ごろは里から高地へと移りつつある

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ハナモモは寒暑に強くたくましい。砂利敷きの駐車場に落ちた実から幼木が育ち驚いたことがある。何本かを近くの斜面に移すと数年で花を付けた。モモは古事記にも登場し、中国からの渡来はかなり古いとみられるが、観賞用の改良は江戸時代という

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住民の手で数々の“花の里”が生まれている。本紙で一部を拾うと―。戦前から庭に植える家が多かった佐久穂町大石地区は、有志の実行委が国道を花街道に変えた。葉や実でせっけんなども作っている。上田市武石余里の「一里花桃」も民家の見事な花の種から増やしたものだ

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各地で人気の種類は一本に赤、白、ピンクの花が咲く「三色桃」。木曽川の電源開発を進めた実業家の福沢桃介が、水車を買い付けたドイツで気に入って須原発電所に植えたのが始まりとされる。これが南木曽町から峠を越えて伊那谷に伝わったという

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隣の阿智村では今や大きな観光資源だ。桜井定二さんは激戦をくぐり抜けて復員、ふと見た花に癒やされた。戦友を弔いながら道端に植え続けた。渋谷秀逸さんは荒涼とした恵那山トンネル工事の土捨て場を名所に変えた。各地のハナモモの里を訪ね、地元の人々の思いに触れるのもいい。

(4月29日)

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