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米の税制改革 課題先送りの楽観論だ

 実績作りを優先し、課題を先送りした問題の多い改革案だ。

 トランプ米政権が発表した税制改革案の概要である。主要国で最高水準にある法人税率を現状の35%から、最も低い水準の15%に引き下げる。所得税率も最高税率を39・6%から35%に変更するという。

 企業の海外移転を防ぎ、雇用を守る狙いが明確だ。ムニューシン財務長官は記者会見で「米国企業の競争力を世界最高にする」と説明。国家経済会議(NEC)のコーン委員長も「歴史的な巨額減税だ」と強調している。

 大きな問題は、財政的な裏付けがないことだ。

 米シンクタンクの試算では、法人税を提案通り引き下げれば、10年間で2兆ドル(約220兆円)の税収が減る。一方で10年間で1兆ドル規模の税収を見込んでいた「国境税」の導入は見送った。

 国境税は、米国から製品を輸出する企業の法人税を軽くし、輸入企業の負担は重くする。見送りは、輸入品を扱う国内の小売業などから反発が出たためだ。

 政権は医療保険制度改革(オバマケア)の代替制度の導入で捻出する財源も当て込んでいた。それも実現のめどは立っていない。このままでは財政赤字の拡大は避けられない。財政規律を重んじる与党の共和党の支持を得るのは難しいだろう。政権の経済政策は混迷の度合いを深めている。

 政府の借金残高は法律で定められた約20兆ドルの上限にほぼ達している。議会が上限を引き上げなければ資金繰りが限界に達し、米国債がデフォルト(債務不履行)に陥る可能性もある。

 ムニューシン長官は、減税効果で国内総生産(GDP)が10年間で1%押し上げられれば「税収が2兆ドル増える」と説明している。楽観論にすぎないのではないか。

 米国経済は、好調なモノの消費が雇用増と賃金上昇につながり、物価も上向きつつある。

 減税が実現して景気が必要以上に過熱すれば、バブル発生の懸念も強まる。連邦準備制度理事会(FRB)が防止のため金利引き上げを加速させると、米国の輸出を抑制しかねないドル高につながる。政権の思惑通りの経済成長は簡単ではない。

 だからといって政権がFRBに圧力をかけ、利上げを阻止するようなことはあってはならない。FRBは政権からの独立が生命線である。経済の実情を直視した適切な金利コントロールを失えば、世界の経済は混乱するだけである。

(4月30日)

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