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混合介護 利用者のためにならぬ

 このまま進めていいとはとても思えない。

 政府の規制改革推進会議が「混合介護」の大幅な拡大に向け、自治体向けの指針を年内に作るよう、厚生労働省に求めた。

 混合介護は、介護保険内のサービスと、全額自己負担となる保険外のサービスを組み合わせて利用者に提供すること。

 現行制度では、例えば訪問介護で利用者である高齢者の食事を作る際、同居家族分を一緒に用意することは認められない。保険外サービスの提供時間を明確に分けるとの規制があり、「使い勝手が悪い」との声も聞かれた。

 厚労省は慎重な姿勢を示している。保険内外のサービスを一緒くたにすれば、高齢者が勧められるままに利用して高額な料金を請求される、保険外を使わないとサービスを受けられなくなる恐れがある、といった理由からだ。

 混合介護の拡大を言い出したのは公正取引委員会で、規制改革推進会議も重要テーマに取り上げた。介護事業者間の競争を促すことで、低料金で効率的なサービスが提供されるようになり、採算性も高まって介護職の処遇改善につながる、としている。

 見方が偏り過ぎていないか。

 厚労省のまとめでは、支給限度額を超えて介護サービスを利用している人の割合は、全体の1・3%だけだ。要支援1、2と要介護1の利用率も限度額の4割ほどにとどまっている。

 経済的な負担が主な要因の一つになっている。2000年度に介護保険が始まってから月額保険料は増え続けている。サービス料の利用者負担は1割といっても、低所得者にとっては軽くない。

 家計にゆとりがある人の保険外サービス利用に伴い、保険内サービスの給付額も増えることが考えられる。一方で月額保険料を引き上げ、受けられるサービスを縮小しておきながら、既に10兆4千億円に達している介護総費用が膨らむのでは元も子もない。

 採算性から介護事業者が都市圏に集中し、高齢化率の高い地方でサービスの選択肢が狭まることにならないか。保険内だけの利用者向けサービスがおざなりにならないか。社会保険で最も大事なのは、公平性の担保である。

 少子高齢化が進み、介護を巡る問題は深刻化している。政府は、調査実績の乏しい在宅介護の実態を把握し、介護職に従事する人たちの意見も聴いて、介護保険の制度設計を見直すべきだ。必要なのは規制緩和の観点ではない。

(4月30日)

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