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中満事務次長 核軍縮の重責に毅然と

 国連の軍縮部門トップである軍縮担当上級代表(事務次長)に中(なか)満泉(みついずみ)氏が就任した。

 日本人女性が国連本部事務局の事務次長になるのは初めてのことだ。停滞する核軍縮をどう前へ進めるか、手腕が問われる。

 国連では核兵器を法的に禁止する条約制定を目指す交渉が3月にスタートした。反対する核保有国と、推進を求める非核保有国との断絶が埋まらない。

 さらに、北朝鮮の核開発問題を巡り、東アジアでは緊張の度合いが高まっている。

 そんな中、中満氏は重責を担うことになった。事務次長は事務総長、副事務総長に次ぐ幹部ポストだ。早稲田大、米国の大学院を経て、国連に入った。

 国連難民高等弁務官を務めた緒方貞子氏の下で旧ユーゴスラビア紛争による難民保護に尽力。たたき上げで世界の難題に向き合ってきた実績がある。

 一般の市民が多大な犠牲を強いられる紛争や戦争の実態を中満氏が肌で知っていることは大きい。より深刻な被害を一瞬にしてもたらす核兵器の惨禍を体験した日本人であることも職務にプラスに働くのではないか。

 核兵器禁止条約制定に向けた取り組みが具体化したのは非核保有国や、日本など各国の市民団体が粘り強く条約の意義を説き続けた結果でもある。広島や長崎の被爆者の生々しい証言が核兵器の非人道性に対する理解を広げたことも忘れてはなるまい。

 その結果、禁止条約に賛同する国は今や多数派となった。条約に反対する米国やロシアといった核超大国や、米の「核の傘」に依存する日本などの抵抗姿勢は相変わらず強いけれど、多数派を無視できなくなりつつある。

 日本政府は禁止条約交渉に不参加を表明した。北朝鮮情勢が緊迫化する中で、核抑止力重視の姿勢により傾きそうだ。

 交渉の議長を務めるコスタリカは各国の意見を取りまとめ、今月後半にも草案を示す考えを示している。6月中旬から7月上旬にかけて開く次の交渉で条約文書の採択を目指す構えだ。

 核兵器は国際社会が取り組まなくてはならない軍縮の中でも解決が難しいものの一つである。中満氏は核保有国と非核国の間で厳しい調整を迫られるだろう。

 核廃絶への道は険しくても、諦めてはならない。日本政府の立場におもねることなく、中満氏には毅然(きぜん)とした態度で核軍縮の必要性を説いてほしい。

(5月6日)

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