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自殺を減らす 身近な支えの強化で

 厚生労働省の有識者検討会が自殺対策の報告書をまとめた。自殺死亡率を今後10年間で他の先進諸国並みにまで下げる目標を盛り込んでいる。

 報告書は政府が今夏に閣議決定を予定している新たな総合対策大綱の基になる。実効性ある対策をまとめ国民の理解、協力も得て、目標を必ず達成したい。

 年間自殺者は1970〜80年代にかけ2万数千人で推移した。90年代に入りバブル崩壊に背中を押されるように増加し、ピークの2003年には3万4427人に達した。その後減少に転じたものの依然として2万人を超す。深刻さに変わりはない。

 自殺死亡率、人口10万人当たりの自殺者数は18・5人。米国や英国、ドイツが10人前後なのに対し突出して高い。厚労省の昨秋の調査では、これまでの人生で「自殺したいと思ったことがある」との答えは23・6%にのぼる。

 報告書はポイントとして、▽長時間労働の是正など過労死対策▽若者向けの「SOSの出し方教育」▽妊産婦の「産後うつ」への手当て―などを挙げている。

 自殺に至る状況の多様さに目を向けたきめ細かな対策が欠かせない。実際に進めるのは自治体になる。国から自治体への支援を十分にすべきだ。

 厚労省調査では、自殺を考えた人の3割が家族や友人、職場の同僚など身近な人に悩みを聞いてもらって危機を乗り越えたと答えていた。自殺のサインがあったとき周りの人が的確に対応できるかどうか、苦しんでいる人に「一人じゃない」と思ってもらえるかどうかは決定的に重要だ。国民への情報提供を強化したい。

 この問題に詳しい高橋祥友さん(筑波大学)が著書でフィンランドの例を紹介している。かつては今の日本より高かった死亡率を、90年代以降十数年間の取り組みで3割低下させた。

 有効だったのは「危機介入チーム」の導入だったという。自然災害、事故など自殺の引き金になりやすい出来事があったとき、専門的な訓練を受けた人が現場に出向き、残された人をケアしてさらなる悲劇を防ぐ。参考にしたい。

 長野県の死亡率は昨年18・4人で全国平均とほぼ同水準だった。見過ごせないのは未成年者の自殺率が高いことだ。

 昨年改正された自殺対策基本法は自治体に防止計画の策定を義務付けた。県内でも計画作りが進んでいる。若者向けの施策には、中でも力を入れてもらいたい。

(5月9日)

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