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先の戦争で日本の海外侵略を正当化したスローガンに「八紘一宇(はっこういちう)」がある。世界を一つの家にするとの意味で使われた。これを刻んだ高さ36メートルの石塔が宮崎市にある。1940年宮崎県知事の発案で中国などから石材を集めて建造した

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敗戦で八紘一宇の石板は取り外され「平和の塔」と呼ばれるように。64年、東京五輪聖火リレーの起点の一つになったことを契機に、再び八紘一宇の文字が刻まれる。日本の力を世界に知らしめたい―。そんな国威発揚の機運が可能にさせた復活だった

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半世紀を経て東京五輪・パラリンピックが開催される2020年。安倍晋三首相が憲法9条を改定すると決意表明した。この年も日本人共通の大きな目標になっており、新しく生まれ変わる日本がしっかり動き出す。新しい憲法が施行される年にして国の未来を切り開きたい、と

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ちょっと待ってほしい。五輪はいつから日本人共通の目標になったのか。東京一極集中の加速という地方の懸念を忘れてもらっては困る。五輪と改憲で少子高齢化など難問が解けるはずもない。改憲が連れてくる未来は軍事が幅を利かす社会ではないか

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自民党総裁の立場とはいえ行政府の長が時期と内容を明示して改憲の歯車を回そうとしている。北朝鮮問題も「追い風」になると踏んでのことだろう。実現すれば時の権力が意のままに改憲を積み重ねる悪しき先例になる。「新しい日本、新しい憲法」のスローガンに踊らされてはいけない。

(5月9日)

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