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規制委委員長 原点に立ち戻った審査を

 原発再稼働の審査を担う原子力規制委員会の委員長に、更田豊志委員長代理を昇格させる政府人事案が、国会に提示された。

 更田氏は衆院の議院運営委員会の所信聴取で、原発の再稼働について「安全かどうかを科学的、技術的に判断する。それが独立性の担保になる」と述べている。電力会社や政府の思惑に左右されず、所信通りの審査を進めることが新委員長の責務になる。

 規制委は東京電力福島第1原発の事故を受け、2012年9月に環境省の外局として発足した。国家行政組織法3条に基づく独立性の高い組織である。

 純粋に科学的、技術的な見地から、安全性を見極めること―。これが規制委の「原点」のはずだ。それなのに、規制委の判断には疑念がつきまとってきた。

 まず運転開始から40年超の原発の取り扱いだ。

 原子炉等規制法は福島事故後の改正で、原発の運転期間を規制委が認めた場合を除き、原則40年に制限した。田中俊一委員長も規制委発足時の国会の所信聴取で「(40年を超えて)運転させない姿勢で臨む」と表明していた。

 それなのに規制委は40年超の原発の審査を優先し、すでに関西電力高浜原発1、2号機など3基が審査に合格している。しかも、審査合格に必要な最終的な試験を一部後回しにもした。設計の古い原発に退場を促す狙いで導入された「40年ルール」は形骸化が進むばかりである。

 政府は15年、老朽原発の運転継続を前提に30年時点の電源構成比率を原発20〜22%と決めている。電力会社は老朽原発の再稼働で大幅な収益改善が期待できる。規制委は独立して安全性を最優先で判断していると言えるのか。

 40年超の原発以外で再稼働した原発の判断でも問題がある。

 川内原発は重大事故時の対策拠点となる耐震施設がないまま審査に合格し、現在も運転を続けている。耐震設計の目安となる基準地震動の算出方法にも、規制委の前委員長代理から疑念が出たのに、十分に検証したとは言えない。

 自民党の一部には、再稼働に向けた審査が申請された16原発26基のうち、合格したのは6原発12基にとどまる現状に不満が出ている。新委員長がこれらの思惑に左右され、慎重さを欠く審査を進めることは認められない。

 国民の信頼を得るには、安全性を客観的に検証することが欠かせない。規制委は原点に立ち戻らなければならない。

(5月12日)

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