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憲法の岐路 国民投票法 欠陥が残ったままだ

 東京五輪が開催される2020年を、新しい憲法が施行される年にしたい―。安倍晋三首相が具体的な期限を区切った改憲発言は、9条に自衛隊を明記するというその内容とともに、見過ごせないことがある。

 改正手続きを定める国民投票法が抱える欠陥や、積み残されたままの課題についてだ。それに目をつむって改憲を押し進めようとする姿勢が見て取れる。

 「この10年で国民投票法が制定され、三つの宿題も解決し、…」。自民党総裁としての考えを詳しく述べたという読売新聞紙上での発言である。何の根拠があって、解決したと言い切れるのか。

 「三つの宿題」は2007年の法成立時、付則に明記された。(1)国民投票の年齢(18歳以上)に合わせた選挙権年齢と成人年齢の引き下げ(2)公務員による政治的行為の制限の緩和(3)憲法改正以外への投票の対象拡大―である。

 (1)は、選挙権こそ実現したものの成人年齢は引き下げられていない。(2)は、14年の法改正で個人の意見表明を認めた一方、組織的な運動については先送りした。(3)の議論は手付かずである。

 法成立時、参院はさらに18項目の付帯決議をしている。その検討も進んでいない。とりわけ重大なのは、投票成立の条件となる最低投票率だ。ボイコット運動につながると自民党が反対し、最低投票率は規定されなかった。

 投票率が低ければ、結果の正当性は揺らぐ。国や社会の土台を成す憲法が、主権者である国民の意思を十分反映せずに変えられてしまうことにもなりかねない。

 問題点はほかにもある。

 国民投票に関わる運動は、選挙運動のような厳しい規制がない。テレビCMも投票の2週間前までは流せる。活発な議論を促すためだが、半面で、資金力に勝る側に有利に働く心配がある。

 CMを含む広告費用に枠を設けることも検討すべきだ。インターネットでのデマの拡散などを防げないか、新たな課題もある。

 国民投票法は、第1次安倍政権下、審議が不十分なまま無理を重ねて成立した。それが、法の根幹に関わる欠陥につながっている。継ぎはぎの手直しでなく、一から見直す必要がある。

 国民投票の公正さをどう確保するのか。前提の条件を欠いたまま、改憲の動きが進むのを認めるわけにはいかない。

(5月12日)

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