長野県のニュース

共謀罪法案 与党の強引さ 目に余る

 衆院法務委員会で共謀罪法案の審議が再開された。与党は週明けに委員会で採決し、18日に衆院を通過させる構えだ。

 審議時間の目安である30時間を超すからだという。会期内に成立させるための勝手な理屈である。強引さが目に余る。

 そもそも、あらかじめ審議時間に枠を設けることが間違っている。立法府の存在意義を自らおとしめるようなものだ。

 まして共謀罪は、刑罰権の乱用を防ぐ憲法や刑事法の規定を空文化し、人権保障の土台を崩しかねない。日弁連や日本ペンクラブをはじめ幅広い層から強い反対意見が出ている。押し切って成立させることがあってはならない。

 与党の自民、公明は日本維新の会と法案の修正に合意した。取り調べの可視化(録音・録画)の対象にするか検討する規定を付則に加えることが柱だ。本則では「捜査の適正の確保」への十分な配慮を義務づける。

 およそ意味のない修正である。可視化は「検討する」にすぎない。適正な捜査は、この法案に記すまでもない当たり前のことだ。

 維新に一定の譲歩をしたと見せて、強引な審議への批判をかわし、成立に道筋をつける政府与党の狙いは明らかだ。その向こうに、改憲への協力を維新から得たい政権の思惑も透ける。

 細部を手直ししたところで法案の本質は変わらない。内心や表現の自由を脅かし、民主主義を損なう共謀罪は、設ける必要も根拠もない。政府が答弁を重ねるほど、それが浮き彫りになった。

 テロ対策のため、国際組織犯罪防止条約を締結することが不可欠だと政府は言う。けれども、条約はそもそもテロ対策を目的としていない。マフィアなどの経済犯罪に対処するためのものだ。また、条約は国内法の基本原則に反する法整備を求めてはいない。

 東京五輪に向けたテロ対策という説明自体が“煙幕”でしかない。テロとは何かを示す文言すら法案には見当たらない。

 一般の人は対象にならないと政府がいくら強調しても、保証は何もない。準備行為さえない段階から、捜査機関は、嫌疑をかければ誰でも捜査対象にできる。

 市民への監視が強まるのは目に見えている。疑われるようなことはすまいと人々が縮こまり、口をつぐむ、寒々しい社会を招き寄せかねない。

 戦時下の治安立法に通じる怖さを見据えたい。共謀罪法案は、廃案にするほかない。

(5月13日)

最近の社説