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東電再建計画 現実を見据えているか

 現実を見据えた地に足が着いた計画といえるのだろうか。

 東京電力ホールディングス(HD)がまとめた新たな経営再建計画である。福島第1原発事故の対応費用として年間5千億円を確保する計画だ。さらに「年間4500億円規模の利益創出」ができる企業体力をつけるという。収益源として、柏崎刈羽原発(新潟県)の再稼働を進める考えを示している。

 同原発については、新潟県の米山隆一知事が、福島事故の原因や避難計画の実効性などを検証しなければ、再稼働について議論できないと表明している。見通しは全く立っていない。

 計画では原発事業は2020年度をめどに、他の電力会社と共同事業体などの枠組みを作るとした。原発に東電が関わることに対する批判を弱め、地元の理解を得る狙いが透ける。

 問題は多い。現状では東電の思惑通りに他電力との協力関係が構築できる見込みがない。

 原発事業の再編には、他の電力会社が消極的だ。福島事故の対応費用の負担を強いられるという懸念が強い。それなのに計画には柏崎刈羽原発の再稼働を早ければ19年度、遅くても21年度と盛り込んだ。現状への認識が甘すぎる。

 青森県に東電が建設中の東通原発も同様の共同事業体で運用する構想だ。一方で福島県が求めている福島第2原発の廃炉は計画に含めなかった。

 東電は原発に経営再建を託す基本方針を見直すべきだ。

 福島事故における東電の責任は明らかだ。3月には前橋地裁が「巨大津波の予見は可能で事故は防げた」として国と東電の過失を認めている。6年以上が経過しても収束の見通しが全くつかない大事故である。

 それなのに安全性に対する東電の認識は改善されていない。柏崎刈羽原発の審査では、免震重要棟の耐震性不足を数年前に把握しながら原子力規制委員会に虚偽の説明をしていた。東電が原発の運転に関わることに国民の理解は得られまい。

 今回のような「絵に描いた餅」の計画では、東電は福島に対する責任を果たせない。中電と共同出資した火力発電の事業会社のように、他事業で主力となる部門を育てることが必要だろう。再生可能エネルギーへの本格進出や、家庭向け都市ガスの販売などで稼ぐ方法を模索するべきではないか。

 原発にいつまでも夢を見ていては再建はかなわない。

(5月15日)

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