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4歳だった男児が統計から漏れていた。東京電力福島第1原発事故から6年余りが過ぎたこの春、福島県が当時18歳以下だった子を対象に続けている甲状腺検査で、新たな問題が発覚した

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この検査で、今年2月までに甲状腺がんと診断されたのは145人、疑いがある人も39人いる。ほかに経過観察が延べ2500人いたが、彼らの容体の変化を県はつかんでこなかった。冒頭の男児も経過観察となり、親が自主的に受診する中でがんが見つかり、手術を受けている

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当初から合点のいかぬことが多かった。福島県の検査体制だけを言っているのではない。継続して診るのは甲状腺だけでいいのか、放射性物質が飛散した他県の人々の健康管理はどうするのか…。海外の研究機関や専門家からも繰り返し指摘されてきた

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原発事故と異常に高い甲状腺がん発症率との因果関係ははっきりしていない。でも、福島には薬を飲み続けなくてはならなくなった子、手術痕を気にして結婚を諦めている子がいる。東電と国が目を向けるべきは、原発事故が引き金となって健康被害の不安を抱え、苦しんでいる人たちが大勢いる事実の方だろう

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その東電は経営再建計画で、堂々と原発の再稼働を収益源の柱に据えた。経産省も近く認定するという。深刻な問題は自治体任せで、避難区域の解除を急ぎ、避難者への賠償を早々に打ち切る。各地の原発は着々と再稼働する。国と電力会社が演じる茶番劇に見えて仕方ない。

(5月15日)

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